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元聖女の意地(3)

 地面に膝をついたままの私に近寄ってきたカイロス様は、乱暴に私の前髪を鷲掴み、強制的に私の顔を上へ向かせる。

 


「対だから何? あんなやつが対だなんて思いたくない。そもそもこの国だって、自分は興味ないからって創世記に全ての管理を僕に押し付けてきた。僕だけがこの国を見守る、それで良かったのに……何百年か前あいつが君の魂に恋して変わったんだ」



 確かにクロノス様は以前一緒に暮らしていた時に「ジェニーを害した国なんてどうでもいい」というスタンスを貫いていた。

 あの態度では国を管理する神だとは言えないだろう。



「あいつは君を失った怒りで、僕が見守ってきた国を粉々に破壊した! 長い年月をかけてやっと元に戻ったと思ったらまた君が現れて、クロノスは君を求めて今度は時空を捻じ曲げ続けて……もううんざりだ!」



 クロノス様が見せてくれた、前世の私だった女性の姿を思い出す。

 私だった女性を殺された憎しみからヴェストリスを破壊し、それでも生き残りを作って私が転生してくるのを待っていたと……確かにクロノス様自身がおっしゃっていた。


 自らが見守り作った国を、自らの対となる存在に壊されたのだ。……その激昂の理由は十分に理解できる。

 


「君が関わるとクロノスが不安定になることは分かっていた。だから不安にさせて揺さぶってやっとの思いで君がクロノスと暮らす空間へ辿り着いて。チャンスを求めて君を時空の歪みに落とし込んだのに。……結局クロノスの方が強いんだ。僕たちは対だったはずなのに、世界はあいつにばかり味方する」

 


 カイロス様は唇を噛み締める。フォード様の顔で。私は髪を掴まれたまま、その様子を見るしか出来なかった。



「ねぇジェニファー。君はこれを聞いてもクロノスに味方する? しょうがない、諦めろ、国くらいまた作り直せばいいって他の神達と同じ事を言うわけ!?」

「……いいえ。その理由が本当なのでしたら、一番悪いのはクロノス様ですわ」

 


 私はカイロス様に少しだけ同情の心を抱いた。

 私がクロノス様と一緒に暮らす幸せを手放すことになったきっかけ、時空の歪みに落ちたのはこのカイロス様のせいだったというのに、なぜか責める気持ちにはなれなかった。

 自分が必死に築き上げてきたものを他人に壊される辛さ……ヘレンに邪魔されて王宮での居場所を失ってしまった私には、理解できるものがあったから。


 カイロス様は本当にこのヴェストリス王国の事を心から大切に見守ってきてくれたのだろう。どうでもいいと豪語する者にそれを壊されたら怒るのは当然だ。



「そこまでやっておいて人間になりたいだなんて馬鹿だと思ったし、ふざけるのも良い加減にしろって思ったよ。協力したゼウスだって馬鹿だと思った。でも……あんなに僕の邪魔をしてきたクロノスがまた君と幸せになろうとしている。絶対に許せない。だから君を殺す」

 


 成る程。カイロス様がクロノス様に対して遥か昔から憎き感情を抱き続けていたことがよく分かる説明だった。

 そして説明が終わったということは、本格的に私の身の危険が迫っている。分かっていても今の私には対抗手段が無い。


 ……指輪に祈りを込めて、クロノス様をお呼びするべきだろうか?

 そう考えたがすぐにその考えを否定する。


 クロノス様は神様に限りなく近いかもしれないが今は人間。ここにお呼びしてしまえば身の危険がある。

 隣国の皇太子を危険に晒すわけにはいかないし、このカイロス様に乗っ取られてしまっている第二王子フォード様も無事に解放してもらわなければならない。その為には……現状では私1人が犠牲になるのが一番良い気もした。

いつも読んでくださる皆様ありがとうございます(*´꒳`*)♡

閲覧数と評価を励みに、糖度高めハッピーエンドを目指し日々執筆頑張ります(๑˃̵ᴗ˂̵)♪

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