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元聖女の意地(1)

 フォード様は王宮の図書室に篭りっきりだという事だったので、王様の御前から失礼したその足で図書室へと向かう。


 普段はあまり近寄る人がいない為かドア戸の金具が少し錆びており、キィ……と小さな音を立てて戸が開いた。

 この図書室の一角には王族しか閲覧できない禁書もあり、私は以前バートン様の婚約者という立場を良いように使いクロノス様を呼ぶ方法を知った。私にとってはそんな懐かしい思い入れのある場所でもある。




「フォード様」


 図書室の奥の部分にある閲覧スペースで本を捲る姿を発見し、声をかける。驚かせてしまったのかバッと上げたその顔は、目の下の隈がひどくやつれて見えた。

 

「ジェニファー様? どうしてここに」

「嫁ぐ前の国王へのご挨拶に。その際にフォード様が元気が無いとお伺いして……皆、心配しておりました」


 そう言うとフォード様は「あぁ〜、これですね?」と自分の目の下を指差す。

 

「最近は知りたいことがあって読書に集中してしまって。それにしても最後に僕にまで会いに来てくれるなんて、ジェニファー様は本当に優しいのですね」


 無理に作られた笑顔に、心が痛くなった。私のせいだ。どうしてもっと上手に対応出来なかったのだろう。8歳も年下の少年にここまで気を使わせてしまうなんて。

 

「……フォード様のお心にお答えできず申し訳ございません」


 謝ってもどうしようもないが、言わずにはいられなかった。

 

「どうか謝らないでください。国のために自分を犠牲にするのは王族として当たり前のこと。ジェニファー様が嫁がざるを得なくなったのは、僕達王家がジュピテール王国に頼らざるをえない程度にしか、この国を復興できなかったせい。僕自身のせいです、だから仕方がない。恋心より国が大切ですから」


 自らの恋心で大暴走した以前のバートン様に聞かせてやりたい! 213回も私情により私を処刑した貴方の弟は、こんなにも立派な考えを持っていますよって。

 

「……それで。ジェニファー様はただ話をしに来た訳ではないのでしょう? こんな場所ではなくもっと景色の良い場所にお茶席でも用意させましょうか」


 立派な考えを持っているだけでなく、察しも良い。

 本当にバートン様ではなくフォード様が後を継ぐ方がこの国は安泰なのではないか。

 

「いいえ、こちらで結構ですわ。ただ中庭の植物についてお伺いしたいことがありまして……」


 庭師からは門外不出と言われたのに自分が無理して聞いたのだと注釈をつけて、この王国自慢の中庭を支える存在である小屋について話す。


「ああハウス栽培ですね。数年前に僕が言った事が参考になったとは聞きましたが、僕が率先して開発したというわけではありません。別に特許がどうというものでもないので、真似していただいて結構ですよ」


「本当ですか? ありがとうございます!」



 国同士の利益関係取引になったらどうしようかと思っていたが、フォード様はすんなりと許可をくれた。

 しかも図書室にある本の中から一冊の本を手早く見つけ「確かこの本に詳細が書いてあります。ここの庭師達が研究成果をまとめたものなので、魔術師が読めばすぐにわかると思いますよ」と手渡してくれた。



「何から何までありがとうございます。本当に助かりますわ」


 逃げ腰になってしまっていたけど、ちゃんと会いに来てよかった。やはり前向きに進むと良いことがある!

いつも読んでくださる皆様ありがとうございます(*´꒳`*)♡

閲覧数と評価を励みに、糖度高めハッピーエンドを目指し日々執筆頑張ります(๑˃̵ᴗ˂̵)♪

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