不器用な優しさ(3)
「国の発展の為にその身を犠牲にしてくれたこと。私達は忘れはしない」
中庭を通りいくつかの回廊を通り過ぎた先、玉座の間にヴェストリス国王はいらっしゃった。
「いいえ、勿体無いお言葉です。私を美化しすぎですわ」
本当に美化しすぎである。
私はただクロノス様の事を考えこの国に尽くし、クロノス様の元へ行くから去るだけで。それが結果としてこうなっただけなのに。
「しかしな、本当は残念に思っておる。そなたはフォードと共にこの国を良くしてくれると信じておった。第一王子のバートンは真っ直ぐ前しか見れない男であるし、その婚約者である聖女ヘレンも元の身分は低い。我が妃も、あの2人にこの国を任せる事になるのを心配しておる」
王様の言いたいことはよくわかる。
でも、あの2人……と言っても私が知っているのは最近のヘレンについてだけだけど頑張っているのも知っている。とにかく、身分だけは抜きにして見守ってあげてほしい。
それに、使い様によっては、ヘレンの聖女の力は私が聖女だった時に使っていた力よりも国の発展に寄与する物になるかもしれない。だってチャンスがあれば全て実現してしまうのだから。
「それにしても、一番心配なのはフォードだ。すっかり塞ぎ込んでしまってな。最近は王宮の図書室に引きこもって本ばかり読んでおる。元々勉学に熱心な子であったが、ここまで棍を詰めていると心配になってしまう」
ちくりと刺さるものを感じた。それに関しては私も負い目を感じている。
「向こうに発つのはまだ少し先だったか? よかったらそれまでの間にフォードと話してやってくれんか」
「……よろしいのですか? 私が会えば余計に傷を抉る結果となる気がするのですが」
私の婚約が決まってからは、毎日の手紙攻撃もプレゼント攻め攻撃も息を潜め、あれだけあったアプローチは完全に無くなった。
婚約が決まったのだから当然かもしれないが、毎日あったものが急になくなるとそれはそれで気になってしまうのが人間というもので、エディソン侯爵家の屋敷の使用人の中でもこの話題で持ちきりである。
勿論その話題のほとんどは、その年齢で手痛い失恋を味わう事となったフォード様に対する同情であるが。
「下手に引きずる方が治りが遅いであろう。賢い子だから大丈夫だと思いたいが、ジュピテールに悪い感情を抱かせたままにしては、将来の国家関係が心配になるからのう。万が一が起こってはならぬし」
確かに王様が心配していることはよくわかる。世の中には情のもつれから戦まで発展してしまう場合だってあるのだ。
……あまり会いたくないのだが、しょうがない。
丁度フォード様にお聞きしたい事もあったし、何事もなく話だけできるのであればお会いしようと覚悟を決めた。
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