私が幸せになれそうな数字(3)
さて。話も進んで大方の国との話し合いに決着がついた。
殆どが現状維持もしくは1割ほどの改悪程度で済んだし、問題のリュンヌ帝国にも逆にこちらから留学という形で何人かの兵や魔術師を指導してもらう形で決着がつき、善戦したと思う。
……残りは、一番友好的に見えていたジュピテール王国だけとなった。
流石に自国の経済を理由に出されると、こちらも強く出る訳にはいかなかった。
向こうの交渉担当者は魔術師なのかローブを着用して目深にフードをかぶっており、口元のみでしか表情が読み取れない。長髪で黒い髪の成人男性ということくらいは分かるが、実に交渉しにくい。それでもジュピテール王国からの支援を全て切られてしまえばかなり苦しい状況になるので、できる限りの支援を残してもらいたい。
なのに……
「……申し訳ありませんが、その条件では支援は続けられません」
ジュピテール王国の交渉担当者は手強かった。
こちらがどこまで条件を下げても、支援の完全なる廃止の方向を崩さない。相手が不足していると明言している食糧を格安で提供すると言っても聞いてもらえない。
「では聞こう。ジュピテールは、こちらがどれほどの対価を差し出せば、どれだけの支援を施してくれると言うのだ? 交渉の場につくということは、何か欲しい物があるのだろう」
業を煮やした様子でバートン様が発言する。
そんな単刀直入に……と思ったが。ジュピテールの交渉担当者の口角が上がったのを私は見逃さなかった。
「我々が欲しいのはただ1つ。それをくださるのなら今までと同じ支援をお約束しましょう」
「……ヴェストリスの王位が欲しいとか、我が国を支配しようとするもので無いのなら考慮しよう」
「恐れながら、バートン様。内容も聞かずに考慮するというのは危険でございます」
お父様も交渉担当者の表情の変化を見逃さなかったのだろうか。明らかに警戒心を強めた。
「ジュピテールは海を挟んで反対側の国が欲しいなどと急に言い出す野蛮な国ではありません。欲しいのは、ジェニファー・エディソン侯爵令嬢。ただ1人です」
……私?
予想外の展開に一瞬思考が止まる。それと同時にヴェストリス側の人間が一気に不信感を露わにした。
「駄目だ。ジェニファーは渡せない」
即答したのはバートン様だった。待って、私は貴方の所有物では無いのですが。
「ではジュピテール王国の使者としてお答えできる解答は、支援の完全なる廃止のみです」
そっと隣のお父様の様子を確認すると、困惑した様子で、同じくこちらの様子を伺っていた。相手の真意がわからない今は様子を見た方がいいだろう。
「……弟のフォードの婚約者候補だ。その頭脳も相待って、渡すわけにはいかない。そうだろう? フォード」
バートン様がフォード様に話を振る。そして本日初めてフォード様が口を開いた。
「ジェニファー様は僕の婚約者だと、今決めました。お渡しする気はありません。そもそも年頃の女性1人をまるで贄にするかのような発言、僕は差別的で侮辱されているように感じて気に食わない」
正義感の強いフォード様らしいが、勝手に婚約者だと決められてしまうのは困る。
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