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私が幸せになれそうな数字(2)

 とりあえず資料通りに発表するという子供でも出来そうな事は問題なく進んでいるので、適当に聞き流しながら諸外国の交渉担当者を確認する。


 ジュピテール王国、リュンヌ帝国、メルキュール公国、ヴェニュス王国、他数カ国……端から順番に確認していくが、クロノス様の姿はない。


 少し残念に思ってしまったが、昨日見たクロノス様の姿を思い出し納得する。こんな会議の場所にまだ子供の域を出ていないような人間を連れてくるわけがないと。

 ヴェストリスの第二王子フォード様は子供ではあるが当事者であるのでこの場にいるだけ。どこかの国が連れてきた魔術師等の可能性が高いクロノス様がいらっしゃらないのは当然だ。

 ……でも、子供なのに外国に護衛として連れて来てもらえるなんて、よっぽど能力が高いに違いない。



「依然としてヴェストリスが支援を必要としているという旨は理解できました。しかしながら我が王国も食糧難が悪化しておりまして、それが財政を逼迫している状態です。他国の為に自国を犠牲にできるのかと問われると……」


 バートン様の説明を聞いた後、一番に話し出したのはジュピテール王国だ。被害に遭ったヴェストリスに一番初めに手を差し伸べてくれた国で、クロノス様に放り出されて呆然としていた私を助けてくれたのもこの国の旅団だった。


「私達リュンヌ帝国も、もう13年も金属類を格安でお渡ししておりますが……そろそろ、という声が帝国内に広がって来ておりましてね。正直もういいだろう、と思っていたのですが。昨日の夜会での惨劇を見て、こちらの国が必要なのは資源ではなく戦力ではないかと。特に魔術師がいない為に得意不得意が大きいですね、違いますか?」


 ……違いません。


 その通りではあるのだが、このリュンヌ帝国は隙があれば他国に侵攻し自らの領地とすることで大きくなった国。ここで同意しては戦力の増強という名目で兵を送り込まれ、リュンヌ帝国に飲み込まれてしまう可能性がある。

 チラリと横目でお父様を確認すると、分かっているというように一つ頷いて話し出した。



「その通りでございます。ですので今後ヴェストリスの魔術師を増やしていきたいと考えているのですが、確かメルキュール公国では、生まれた子供の適性を見極めるテストをされているとか」


 メルキュール王国は教育システムが先進的で、その子供毎の生まれ持った才と興味のある事柄を掛け合わせ、適正ある分野への教育を行うらしい。そのため適材適所、能力の高い職人肌の人が多いという特徴を持つ。


「そのシステムを参考にさせていただいて、ヴェストリスでも魔術に優れた子供を発掘し教育していきたいと考えております。魔術師の産出国とも言えるジュピテール王国には及ばないかと思いますが、それでも今よりは遥かに良くなるでしょう」


 なるほど、初めて聞く案だ。

 お父様が前々から温めていたのかもしれないが、急に思いつきで言った可能性もある。だって今からそのシステムを構築するにはかなりの手間も費用もかかる。理想、かもしれないが、その理想までの間を繋ぐ策が必要だ。


「運用方法をお教えするのはメルキュールとしては問題ありませんが、かなり手間暇かかるものですよ。ヴェストリスにそれを行うだけの体力があるようには思えません」


 メルキュール公国の担当者が言う通りだ。


「その点に関しては心配無用です。私の愛娘が、すでにある程度システムを構築しておりますゆえ」


 バッと全員の視線が私に集まる。


 ……え、私?


「……お父様。あれ程秘密にしてくださいと申し上げましたのに」


 苦笑いしつつ、横に座るお父様の表情を確認する。

 私はそんなシステムの事、全く知らない。この場を嘘張ったりで乗り切れと言うのか。


「この場で言わないと皆様に信じていただけないだろう。……この、私の愛娘ジェニファーは大した能力の持ち主でしてね。幼少期よりヴェストリス王国に生まれた子供たちの外見データを収集しております。今も毎年欠かさず行っていて、それを改良し公的システムにすれば殆ど費用も期間もかからないはずです。なんせ基礎はこのジェニファーが、エディソン侯爵家が既に作り上げておりますゆえ」



 ……あ。私のクロノス様探しの一環を流用しようという事ですね?


「ジェニファー! お前そんな事をしていたのか。 言ってくれれば王家としても協力したものを」


 違うんですバートン様。クロノス様を探したかっただけで、そんな公的な目的は無かったんです。それに王家には勿論知られたくなかったし、お父様にも秘密にしていたはずなのに何故知られているの!?


 わなわなと震えそうになる手を握りしめて必死に笑顔を保つ。


「それならば問題ありません。ただその代わり現状行っている木材の輸出価格を少し上げさせていただきたいです」

「……そうですね、それが妥当でしょう」


「間に割って入るようで申し訳ないのですが、我が国にもその収集システムを教えていただけませんか? メルキュールのシステムはとても難しく費用のかかるものでしたが、そちらのシステムは侯爵家とはいえ1貴族で作り上げたもの。我が国でも導入できる可能性があるかと」


 ヴェニュス王国は、最近国民の間に反王国思想の広がりを見せており、きっとその辺りに使いたいのだろうなと予想が付く。

 ヴェニュス王国が我が国の海産物を大規模輸入してくれているおかげで財政は助かっている面が大きいので、受け入れても良いかと思う。私がそう考えていると、横でお父様が頷いた。

いつも読んでくださる皆様ありがとうございます(*´꒳`*)♡

閲覧数と評価を励みに、糖度高めハッピーエンドを目指し日々執筆頑張ります(๑˃̵ᴗ˂̵)♪

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