私が幸せになれそうな数字(1)
魔物は全て倒され、負傷者はいたものの死者は無し。深手を負った者はいなかったので、ヘレンの聖女の力で全員治せたそうだ。「私の評判上がっちゃったぁ〜」なんて不謹慎にも喜んでいたらしい。
本当にヘレンらしい発言で、知った時には思わず笑ってしまった。
魔物の襲撃があった割に人的被害がこれだけで済んだのは、ひとえに来賓として来てくださっていた諸外国の皆様の助けがあったからこそ。きっとクロノス様もその1人だったのであろうが、確証は持てない。
ひと段落し私がお父様と一緒にエディソン侯爵家の屋敷に帰ってきたのは、日付を跨いだ夜中だった。
◇◇◇
そもそも今回諸外国の皆様にお集まりいただいたのは、未だ復興期にあるヴェストリスへの支援を続けてもらうため。前夜の晩餐会が散々な事になったので、もうこの会議がどこに行き着いてしまうのか見当もつかないが、私の仕事は今日も続く。昨日とは場所を変え、王宮の深部。絶対に魔物に邪魔されないような部屋を選び、そこで会議が開催されることとなった。
「これをほぼ丸投げにされる我がエディソン侯爵家を労って欲しいものだね。なぁジェニファー、昨日はうんと走っただろうから、今日は思考を走らせてくれるように頼むよ」
交渉のテーブルについた私の横の席に座るお父様から、チクチクと棘のある言葉が投げかけられる。昨日フォード様を探して危険な目に遭った事を根に持っているらしい。昨日侯爵家へ帰る時にも散々怒られたのに、まだ言うのか。
「それは昨日謝罪いたしましたわ。それに丸投げされたと言っても、一応役に立たない王族の皆様もこの場自体にはいらっしゃいますし。交渉はエディソン侯爵家がしますが実務は宰相のメディス侯爵家の方にそれこそ丸投げするではありませんか」
その役に立たない王族達に聞かれては困るので小さな声で言い返すと、お父様は「確かにそうだが、そうではない」と妙な否定をする。
「昨晩から妙にふわふわしているだろう。非現実的な事があって動揺するのは分かるが気を引き締めなさい。この国の未来が我々に掛かっているのだから」
……顔や態度には出していないつもりだったのに。しかしお父様に言われるということは本当にオーラが出ているのだろう。
「ジェニファーは昔から、顔に出ないようで出ているから。慣れ親しんだ者ならすぐ分かるよ」
「大丈夫ですお父様。昨日切れてしまった髪もドロシーが上手くカットしてくれたおかげで誤魔化せていますし、気分を入れ替えて頑張ります」
いけない。クロノス様のことは一旦忘れて、目の前のことに集中しなければ。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。昨晩は我が国の失態をお見せしてしまい……危険を顧みず共に戦ってくださった皆様には、私から最上級の感謝を。どうかこのまだ復興期にあるヴェストリスをご支援いただきたく、まずは息子で第一王子のバートンより現状の我が国の説明をさせていただきますゆえ、ご検討願いたい」
我がヴェストリス国王はそこまで言うと場をバートン様に譲り退出して行った。
どうやら昨日の騒ぎで体調を崩したらしく、安静が必要……とのこと。どこまでが本当でどこからが建前なのかは私にもわからない。分かるのは、こういう会議の場をバートン様に仕切らせると危険だということだ。
そんな私の思いを当然知らないであろうバートン様が、用意されていた資料を使い我が国の現状を説明していく。島国のため貧弱な資源、物理に頼らざるを得ない防衛。それでも力を入れてきて安定している農業面、交通整備。
……はい、その安定してきている面は、我々高位貴族の13年間の成果ですよ?
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