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それを、私が(1)

ハッピーエンド派閥な作者なので、最後はハッピーエンドで終わりますよ!(´;ω;`)

 私が生まれてくる前からずっと愛し、待っていてくれた。

 触れ合えずとも見守り、時には時間を操作して。私がまた呪文を唱え再開できる日を、ずっと。


 そんなクロノス様を私は愛してしまった。


 愛した対象が、神様だっただけ。

 ――ただ、それだけだったのに。




 気がつくと、クロノス様の腕の中だった。傷どころか肌荒れ一つない胸元に顔を寄せて、頬を擦る。ずっと帰ってきたかったこの場所に帰って来れた。また一緒に暮らせるのだと思うと幸せだった。


「ジェニーからすり寄ってくるなんて、珍しい」 

「だって、嬉しくて。ずっとここに帰りたかったのですから」


 今頃ヴェストリス王国では私はどういう扱いになっているのだろうか。神隠しにあったとかで捜索されているかもしれないが、もうどうでもいい。クロノス様の元へ帰って来れたのなら、後はどうでも。


「またクロノス様と一緒に暮らせるなんて、夢みたい」


 突然私を包んでいた温もりが離れる。クロノス様が体を起こした為、結ばれていない長い銀色の髪が私の顔を掠めた。


「クロノス様?」


 理由が分からず、離れたその体に向かって手を伸ばす。しかし予想に反して私の手はクロノス様に届かなかった。

 ……急に短くなってしまった自分の腕。それは肉体の本来の年齢である5歳程度の長さだった。急な年齢操作に違和感を感じクロノス様の表情を伺うが、美しく微笑まれるばかりで全く心の中が見えない。


「ジェニーを時空の歪みから助け出し、もし私の事をまだ嫌わずにいてくれたら……話そうと決めていた事がある。聞いてくれるか?」 


 その真剣な声色に、私はただ頷くことしかできなかった。





 ドラゴンの姿になったクロノス様はあの馴染みの空間から私を連れ出して、ヴェストリス王国が一望できる高い丘の上に降り立った。私を優しく草の上におろしたクロノス様は再び人の姿を取り、薄着だった私が寒くないようにと私の肩に上着を掛ける。


「クロノス様、お話ならあの家の中でも出来たと思うのですが……」


 嫌な予感がした。あれほど私を閉じ込めて出そうとしなかったクロノス様が、再度無事に手に入れることが出来た私を外に連れ出すなんて……以前なら全く考えられなかった行動だから。


 『――基本的に呪文1回に対して1回っきりの逢瀬だ。無理矢理にでも神の空間に引きずり込まなければ、もう一度呼ばれるまでは神の側が望んだとしても会えない。だから神に気に入られた人間は突然に消えるのだ』


 クロノス様の口から聞いた言葉を思い出す。あの言葉が本当であれば、私がここでクロノス様と離れてしまえば、もう一度私が呼び出すまでは会えない事になってしまう。

 ……でも大丈夫。今の私には、クロノス様をお呼びする正しい方法が分かる。もし離れてしまっても、またお会いできる。


 5歳らしい身長に戻った私と目線を合わせる為に、クロノス様は膝をつき微笑む。何度も見た笑顔のはずなのに、私の心臓は警告音を発するようにドクリと大きな音を立てる。


「あそこに居ては、また時空の歪みに嵌ってしまうから。そうなれば、私にはもうジェニーを助け出す事は出来ない」


 意味が分からない。あの空間から無理矢理出たから歪みに嵌ったのだと、クロノス様自信が説明してくれた。では私が出なければいいだけの話だ。


「もう安易な行動は致しません。危険な場所には2度と近寄らないと誓いますわ! だから……」


 ――また、あの場所で一緒に暮らしたい。


 私のその言葉は、口から出る事を許されなかった。唇に人差し指を優しく当てられただけなのに、それだけで口が動かなくなってしまう。


「……私は、こうしてジェニーを苦しめるばかりだ。自分の感情からジェニーに苦しい時間を繰り返させ、神である私と共にある事によって、理想とした未来を諦めさせた。いくらジェニーが許してくれも、こんな結果は私自身が納得できない。ジェニーの望んだ未来を叶える術が有るのなら、その可能性を取りたいと思うのだ」


 子供に優しく諭すような声色だった。その声色に反して私の心は揺さぶられ、心臓の音がどんどん大きくなる。この先を聞いてはいけない……直感でそう理解出来た。それなのに私の唇は震えるばかりで言葉が出ない。


「いつだったか、自害しようとしたジェニーを見て、決意したたんだ。愛する人をそこまで追い詰めた私は、そもそも神としても一人の男としても失格だ。だから――」


 ――神を辞めようと思う


 急展開に脳の処理がついていかない。唇に当てられたクロノス様の指を恐る恐るつかみ、引き剥がす。


「……確かに自害したい程に辛い時もありました。でもそれはクロノス様だけのせいではありません。だからそんな、責任を取って……みたいな事はやめてください」


 震えを誤魔化しきれなかった私の声は思ったよりも小さかった。


「ジェニーは優しいね。だから今までも本心を隠し私の幸せに付き合ってくれた。いくらジェニーが許してくれようとも、今後ジェニーを心から幸せに出来ない私は、私自身が許せない」


 クロノス様は今までも肝心な所を教えてくれなかった。私も、知りたいとは思いながらも深く聞く事はしなかった。……だから今まですれ違ってきた。私はもう後悔したくない。震えている場合では無いのだ。

いつも読んでくださる皆様ありがとうございます(*´꒳`*)♡

閲覧数と評価を励みに、糖度高めハッピーエンドを目指し日々執筆頑張ります(๑˃̵ᴗ˂̵)♪

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