孤児転生その3
9 孤児転生-3
「……さて、オハナシしましょうか」
「…報告では、なく…?」
「私はそう言ったつもりですが、貴女にはそう聞こえませんでしたか?」
「いえ、報告と聞こえました」
教会にある部屋で私とシスターが向かい合って座る。
これ以上シスターを突いてはいけないと分かっているので、本題に入ろう。
……とはいえ、私にはシスターが何を言いたいのかさっぱりわからない。私が普通の子どもではなく、転生した者であることは気づいているであろう賢いシスター。
それでも愛情を持って接してくれたのは尊敬に値するお方だ。
「……貴女が転生者なのはわかっていました。そもそも4歳の子が孤児院の門を文字通り叩いて"たのもう!"なんていう筈ないですからね…。この世界でも稀に転生する者が現れるので私も特段驚く事はなかったのですが、今回は別なのです」
そういうと、机の上に一枚の用紙を出したシスター。
そしてブッと飲んでいた水を吹く私。
「……」
「申し訳ございません…」
少し紙にかかったようで、そっと布で拭くシスター。
「……うへぇ、相変わらず凄い美化されてる」
「…ハァ…やはり、貴女はあのお方なのですね」
「ぁー……隠した方が良かったです?」
「私としては、変に隠して無茶苦茶な言い訳をする貴女も見てみたかったので残念です」
「そっち!?」
シスターが頬に手を当てて残念そうにため息をつく。さっきから残念そうにしていたのは、もしや小芝居じみたやりとりがしたかったから?この人なかなか面白い性格してるな。いや知ってたけども。
「まぁ、そういうの私苦手なんで勘弁してくださいな。ララ・フロックハート、それが前世の私の名前ですよ……ちなみにいつから気づいてました?私がララだって事に」
「貴女がこちらに来てすぐに、教会で信者同士による窃盗騒ぎがあったでしょう?アレを解決したのが何故かベロニカさんという結果になっていた時、あのお方がここにいるのではないかと確信しました。悪目立ちしたくないから適当に勘違い出来る人物を見抜いて功績を丸々擦りつけ、その人物も疑問に思わないように事件に関連づけさせて…って技量、あのお方以外にはスマートに出来ませんもの」
「貶されてんのか褒められてんのか」
そしてシスターの中のララってそういうイメージなの?やけに具体的なのは何故?
シスターのララの評価にどう受け取っていいか戸惑っている私。そんな私を見たシスターがそっと一言。
「…やはり覚えていないのですね…いえ、やった事は覚えているのでしょうが関係者までは覚えていないと言った所でしょうか」
前世で関わってた!しかも私なんか押し付けてた系だわコレ!どうしよう!え、この村来たの前世含めて初なんだけど!?
あー、もうこうなったら!
「…それはこれからシスターがする報告に関係が?……ないようであれば本題に戻りましょう」
顔の横に落ちて来た、結ぶには短い髪の束を耳にかけ、そっと微笑む。シスターがジト目で私を見るけど、様子からして当たりなので何も言わずにただジト目で私を見るだけ。視線が痛い。
「……まぁそうですね……時間もなさそうですし。コホン、落ち着いて聞いてください。近々こちらに視察団が来ます。目的は慰問と視察、そして金髪の孤児の探索です」
「え?」
何その後半のピンポイントな目的。私じゃん。いや、他にもいるけど……。あれ、いたっけ?
「教会の古来からの言い伝えにより、生まれ変わりの目印となる金髪の孤児がこちらにもいるとわかった偉い方がこちらに視察団をよこしたようですね」
「??」
教会の古来からの言い伝えってガチのヤバいやつじゃね?てかそれ私じゃん。生まれ変わってるね。
「今年が探索の最後の年だと聞いているので、彼等も血眼になっている事でしょう……」
「…ふむ?」
今年が探索のラストの年?探索するのに期限を設けていた?てかなんで血眼?視察団の人は何故金髪の孤児を探すの?てか金髪の孤児ってピンポイントすぎない?(2回目)
「そして視察団の来日と教会の大掃除の日と被りまして…」
「ふむ?」
そういえばそろそろ大掃除の時期だったなぁと思い出す。
でも何故それを今言うのか。
この先の展開が分かるような分かりたくないような。
「なので、大掃除の時に外の掃き掃除と窓拭きを貴女にお願いしたいのです」
「え???」
何が"なので"なの!?
てかフツーそういうのって隠すよね!?
何故外掃除を割り振る?嫌がらせ?
落ち着いて聞いてって、そういうこと?
全然話の繋がりが分からない。