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孤児転生その4

10 孤児転生-4


「あー、シスター……そのいまいち報告の内容が理解出来ないのですが……」

「おや、どの辺りがでしょう?」

「まず教会の古来からの言い伝えって何でしょうか」


シスターは、そこからでしたかと意外そうな顔して私を見る。いや、確かに前世では成績優秀でしたけど、"教会の古来からの言い伝え"なんて貴族令嬢が知る機会そうそうないですからね?


そしてシスターは語ってくれた。

教会には輪廻転生が言い伝えられている。悪人は死後そのまま裁きにかけられ地獄へと行くが、冤罪だった者や罪を擦りつけられた者、7歳になるまでに非業の死を迎えた――7歳まではどんな生まれでも神聖なるモノとされている――に対しては善人と同じように輪廻転生の機会を得られるということ。

そして輪廻転生する者が死ぬ前の世界で強く望まれた者だった場合、目印になるように金髪にされる事そして高確率で孤児という身寄りのない状態で元の世界へ転生する事が多い、という何とも眉唾物な言い伝えがあるとのこと。


そこまでして、その人に逢いたかったとか執着心が丸見えで私はゲンナリするんだけど…。



少しパサついた今世の髪を一束掴む。

今世では水浴びしかしていないので、前世のような艶なんてない髪の毛…前世では薄茶色の髪の毛だったなぁと懐かしむ。


ふと今世の両親を思い出そうとするが、物心ついた時には一人だったので何も思い出せず……。


「……」


前世で強く望まれた、ねぇ。

ウィリアム(おとうと)くらいしか該当しそうにないけど、あの子まだ生きてるのかしら。


「なるほど、金髪の孤児までは理解しましたが……視察団は一体誰を探しているのです?それに、そもそも何故シスターは私にそれを報告するのです?」


そう言うと、シスターはポカンと口を開けた。

おん?私何か変な事言った?


「確かに私の前世はララ・フロックハートで、聖女であり稀代の悪女でもあるリリア・フロックハートの妹ですが……リリア姉様の尻拭いしかしてない私を強く望むなんて、どこか盲目的に私を見てた(ウィリアム)くらいでなくて?」


……つい前世のような口調になってしまったが、つまり転生できるくらい望まれる程、愛されてはいなかったのではという疑問が。身内はノーカウントとして。


「……本気で、言ってます……?いえ、弟君(おとうとぎみ)もそうですが…」


シスターはこめかみをぐりぐりと指圧して、最初に机に出した紙を私の目の前に突き出す。


「……」

「……」


そっとその紙を避けて…………だめ?見ろって?いや、だってこれ……



「"真なる聖女"」

「えぇ」

「…ララ・フロックハートの隠された真実」

「えぇ」

「稀代の悪女である姉によって呪いにかけられた可哀想な令嬢」

「間違ってはいないでしょう?」

「姉とその友人等による数々の悲惨な事件を未然に防ぎ、又被害を最小限に(とど)めるも呪いにより一切の功績が表に出ることはなかった悲劇の令嬢…」

「そうですね」

「周囲からの風評被害を物ともせず、他者の為に国の為に文字通り身を捧げ最期は呪いによって亡くなった悲劇の令嬢を、人々は"真なる聖女"と呼んだ……」

「はい」


優雅に紅茶を飲むシスターを恨めしく見つめる私。

……そのティーカップどこから…あぁ、見習い(ベロニカ)の持ち込みね。

私にも紅茶くれないかな、砂糖マシマシで。


シスターに入れてもらった砂糖マシマシの紅茶を一口飲む。




ぬああああ

何この羞恥プレイ。


誰だよこんなん書いたの!

紙の端っこをクシャッと握りしめたら、シスターが同じ紙をドサッと束で出してきやがった。


そんなに予備があるならこの紙思いっきりグシャグシャにしてもいいかなぁ…いやダメだよ、これは貴重な資源これは貴重な資源。


落ち着いて、私。

この紙ってか新聞の所に前世で顔見知りだった第一王子の名前があったとしても落ち着いて私。


ウィル(ウィリアム(おとうと)の愛称)の名前もちょろっと書いてあるの発見しても落ち着いて私。


何やってるのあの人たち。ウィルは、まぁ、なんとなく分かるよ?こう……過保護だなぁと前世で何回も思ったし。でも殿下は?!姉様に頼み事してくる時くらいしか寄ってこなかった脳内花畑だったじゃん!助長していた姉様の事内心見下していたの私気づいていたからね!?姉様は全く気づかなかったけども!


頭を抱えて悶える私を微笑みを携えて眺めるシスター。

紅茶のおかわりを要求して、今度はミルクを入れる。


こうちゃおいしい。


私の思考が逃げていることを察知したのかシスターが新聞を広げて見せてくる。


「こちらも見てくださいね」


シスターが指差す新聞の記事。そこには、今年探索最後の年で"真なる聖女"の偽者多数現るとデカデカと書いてあった。


そっと目を(つむ)り、天を仰ぐ。



転生して同じ世界だったのは嬉しいけど、こういうのはやめてほしい。教会に伝わる執着の権化みたいな金髪の孤児なんていう設定までは望んでいなかった。


死んですぐに転生できると魂が理解した時に、自由に生きたいって思った。だから、どんな世界に生まれ変わっても頑張ろうって、もう誰にも縛られたくないって思った。



なのに、この仕打ちはないだろう?








ウィリアムとルークは同一人物です。ウィリアムは遠い分家の子で、その時に呼ばれていた名前でした。ルークはフロックハート家に引き取られてからの名前です。ルークは表向き、ウィリアムはララ専用の呼び名となっています。

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