エピローグ あなたと一緒にいたい
ジャン先生は投獄されてその後の裁判でおそらく一生外には出られない判決になるだろうとのことだった。
国王は少し前にジャン先生が怪しい動きをしていることに気づき、また裏で人身売買なども行っていることを知りリオネル様に調べさせたのだそう。
そして彼の家を調べたところで私の血を隠し持っていることを知り、そして病についても彼の自宅の日記から嘘だということが判明した。
一方、私はというと、リオネル様が私との婚約をどう思っているのかを聞けずに数日が経っていた。
変わらず護衛騎士である彼は私のことを見守っているけれど、正式な婚約までは一定の距離を保っているように思えた。
国王に言われたから仕方なく彼は私と結婚するのではないだろうか。
そんな不安がずっと頭をよぎって離れない。
だから思い切って私は彼に告げることにした。
「ねえ、リオネル様」
「なんでしょうか」
「婚約、断ってくれていいわよ」
「え?」
彼は思わず足を止めて、私のほうを見る。
「だって、あなたは剣の道を究めたいでしょう? それにあなたにも好きな人の一人や二人くらい……っ!!」
そう言っている途中で視界がぐらりと揺らぐほどの衝撃が私に襲い掛かる。
彼に抱きしめられている──
そんな風に気づいたのは、彼の腕が私の首を優しく包み込んでいるのを感じたからだ。
「なんで……?」
「俺はあなたのことがずっと好きでした。それなのに、いつ気づいてくれるんですか?」
「え? ……え?」
私は理解ができずに思考が停止してしまう。
「俺はあなたの傍にいたい、国王の座が欲しいからとかそんなんじゃなく。ただ、あなたと一緒に生きたいんです」
「リオネル様……」
「俺と結婚してくれませんか?」
そんな風に耳元で言われた私の頬を涙が流れていく。
こんなに思ってもらえて、私は、私は幸せだ。
私は今まで国の為にと生きてきた。
王女として国のことを第一に考えるようにして、それが私の生きる運命だと、使命だと思ってきた。
『幸せになりたい』
そんな気持ちが身体の底から湧き出てきて、どうしようもなく彼の事が好きでたまらず私は彼を抱きしめ返す。
「私は、私の幸せな人生を生きてもいいですか?」
「ああ、一緒に生きよう」
私の頬に優しく添えられた手に、そっと私は自分の手を重ね合わせた──
短編で描けなかったクラリスの幸せを描きました。
お付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。
明日からは下記の三作品を中心に更新していきます。
◇◆◇
(聖女×シンデレラストーリー+○○←公爵様の秘密)
『力を失ったことで虐げられて感情が欠けた聖女は、秘密を抱えた公爵様に甘々に溺愛される』
(捨てられた令嬢×スローライフ+溺愛新婚生活)
『誕生日に捨てられた記憶喪失の伯爵令嬢は、辺境を守る騎士に拾われて最高の幸せを手に入れる』
(ヴァンパイア×溺愛×シンデレラストーリー)
『吸血鬼の花嫁~罪人聖女と呼ばれた私は、再会した幼馴染の彼に溶けるほど溺愛されています~』




