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第10話 守るべきもの、守りたいもの

 私は珍しく国王より呼び出されて謁見の間にいた。

 玉座に深く座っている国王はなにやら真剣な表情をして私のほうを見つめて、こう告げた。


「婚約者を決めた」


 あ、ついにその時が来たのだと私は覚悟をして国王の次の言葉を待つ。

 一体誰なのか、どこかの王子だろうか、それともどこか国の中の上位貴族とかかな。

 そんな風に思っていたが、出てきた名前は意外な人の名前だった。


「リオネルだ」

「え?」

「お前の護衛騎士をしているリオネル。あいつをクラリスの婚約者にして、未来の国王にしようと思う」


 その言葉を聞いて素直に嬉しくは思ったが、果たしてリオネル様はそれでいいのだろうかと真っ先に思ってしまう。

 しかしどうやらもうすでにリオネル様には話を通しているようで、彼は快諾したのだという。

 そっか、彼は私と一緒になることを受け入れてくれたんだ。

 でも彼は剣の道を諦めて国王として立つことを本当にいいと思っているんだろうか。

 そんな風に思いながら、私はマリエット侯爵家に戻った──




◇◆◇




「ついに決まったそうだな、婚約者が」

「はい、ですがリオネル様はそれでいいのかどうか」

「あいつなら納得しているはずだ。不安なら明日聞いてみるといい」

「はい……」


 お父様と言葉を交わした後、そのまま私は自室へと向かった。


 自室にあるベッドの上に寝転がって私は天井を見上げながら、今日国王に言われた言葉を脳内で再生しながら考え込む。

 リオネル様の未来を思う気持ちと、自分自身の恋心の間でとても悩んでしまう。

 あれだけ国の為にと言いながら、国の為にと覚悟を決めておきながら、いざとなると好きな人の幸せを考えてしまう。


 自分の気持ちにわがままになっていいのだろうか。

 彼を政略結婚で縛ってしまっていいのだろうか。


 そんな風に思ってしまう。


「──っ!!!!」


 その時、突然視界がぐらりと揺らぎ、そして気づいた時には私の顔のすぐ横にナイフが突き立てられていた。

 誰かに馬乗りになられていると気がついたのはそのあとで、そしてそれは自分で力づくで抜け出せないことから男なんだと知る。

 叫んで助けを呼ぼうとしているが、口を手か何かで塞がれており全く部屋の外に届かない。


 助けて……!!


 そう心の中で叫んだ時に馬乗りになっていた男は、誰かに蹴り飛ばされて吹っ飛ばされた。


「はぁ……はぁ……」


 私は何とか状況を把握しようと部屋を見渡して情報を得ると、遠くに蹴り飛ばされた男がゆらりと起き上がってこちらを見た。

 その瞬間、月明かりに照らされてその姿が露わになる。


「……ジャン……せんせい?」


 その男は王宮の医師であるジャン先生だった。

 でもその狂気じみた顔を私は知らない。

 彼は私のことを見るとにやりと笑って、懐からもう一本のナイフを出してこちらを見る。


「やはりあなたでしたか、ジャン先生」


 そう発言をしたのは、ジャン先生を蹴り飛ばして私を守るようにして立ちふさがっているリオネル様だった。

 ジャン先生はリオネル様の言葉を無視するかのように私のほうしか見ておらず、今度は笑いながら私に言葉をぶつける。


「あなたが悪いんですよぉ!! あなたが私のことを好きにならないから、だから、だから、こんなよくわからない騎士と結婚するだなんて私は許しませんからね!」

「なに、言ってるの……?」

「ジャン先生、あなたはクラリス様を我がものにするために病だと嘘をついて、自分のもとに通わせた」

「え……?」

「そうして診察のためと言いながら、クラリス様の血を入手して自宅にコレクションしていましたね?」


 それを聞いて自分自身の血の気が引いていくのがわかった。

 まさか、まさか……。


 血をコレクション…?


「クラリス様の血は眺めているだけでもう最高なんですよ~。あなたがずっと私の傍にいると思うだけで嬉しくて嬉しくて」


 彼は何を言っているのだろうか。

 私は段々身体が震えてくるのを感じた。


 それと同時に近くからものすごい殺気を感じて、私は思わず「彼」を見た──



「言いたいことはそれだけか?」

「はい?」

「彼女を散々傷つけて嘘までついて、その罪贖ってもらうぞ」


 そう言うと、リオネル様は携えた剣を抜いてジャン先生のほうに一直線に向かい、ジャン先生に飛び掛かる。

 咄嗟にナイフで応戦しようとするジャン先生だが、もちろん剣の腕で彼に敵うわけもなく持っていたナイフは遠くに投げ飛ばされた。

 リオネル様は剣をジャン先生の首元に突きつける。


「お前を殺しはしない。王命だからな。だが、俺はお前を決して許さない。お前の罪だったら一生牢屋だろうから、たっぷり死ぬまで後悔しろ」

「ふざけんなっ!! この……っ!!」

「それ以上喋ったら、喉が切れるぞ」

「──っ!」


 私はしばらくその場から動くことはできなかった──

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