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凪の始まり  作者: 樹本 茂
9月 リリィさんと海(後編)
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2 やるしかない

リリィさんが防波堤に来なくなって1か月になる。俺は、その後も毎日リリィさんが来そうな時間を狙って行っていたが、それでも会う事は無かった。


土曜日の午前10時過ぎ、俺は、悪いとは思ったが、リリィさんのアパートの前で、リリィさんの一階の真ん中の部屋のドアの前で、今、まさにチャイムを押したところだ。


外開きのアルミの外装が茶色の、どこにでもあるアパートのドアの取っ手の、左側の目線の高さの壁にインターホンはあって、そこを押したのだが何ら中からの反応は無かった。


留守か……


出直すかどうか……


俺は今日は……一つの答えを持ってきていた。


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