26 おわかれ
俺の腕の中でお姫様抱っこにご満悦なリリィさんとは対称的に俺は、さっきこの完ロリが呟いた意味の解釈で心が揺さぶられていた。ちょっと、何?こんな子供にいいようにされている感じ、自分で自分が許せない。
暫く砂浜を歩くと防波堤には階段があってそこから防波堤の上に戻り、荷物を取って、リリィさんの身体の上に無造作に転がして、一緒に荷物も運んでいる。リリィさん+箱数個。既に23時を優に周り、渋滞の車列すらなくなっていた。
もうじき、リリィさんのアパートに着く。防波堤の上でお姫様抱っこをしながら歩く俺の視界、月明かりだけが見える防波堤の200mくらい先に……人かな……人だな……髪の毛が長い女の人、白い服を着ている……ワンピースかな?ひざ下くらいの……その人は俺の方に気付いたようで、こちらに向かって近づいて来た。
「リリー!」
その刹那、静寂を切り裂くような鋭い怒声を浴びせてきた。
俺の腕の中で、俺を見ていたリリィさんがその声の方を見て、
「けんたろー、ありがとう。もうここでいいよ。帰って……」
今まで聞いたことも無いような低くこもった声で俺に言ってきた。
「お母さんなの? こんな遅くなってしまって、謝らないといけないから---」
俺が話をしている途中で遮り、おれの腕から降りると荷物を持って、
「さようなら、帰って、お願い、帰って」
必死に俺に懇願していた。そんな、大ごとなのか?なら、なおさら俺は事情を説明しなければ、なんなら、謝罪の一つや二ついくらでもしようものなのだが、そんな、俺の想いとは全く違う次元のリリィさんのうろたえぶりが気になって、彼女を尊重するために俺はあえてこの防波堤の上で立ち尽くしていたが何かあったらすぐにでも駆けつけられるようにずっと視線はリリィさんを見つめていた。
駆けていったリリィさんは、お母さんに何か話をして一緒に歩いてアパートへと続く路地へと消えていって、二度ほど俺の方を振り返っていたがそのまま路地に入り俺からは見えなくなった。




