表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凪の始まり  作者: 樹本 茂
8月 リリィさんと海(前編)
84/387

22 リリィさんのパパ

「私に一番優しかったパパはいなくなってしまったの……もう、会えなくなったの……もう……嫌なの……優しくされると思い出すの……パパの事。

それで、優しくされると、また、いなくなっちゃうんだろうなって考えてるの……私に優しくしてくれる人はいなくなっちゃうのかなって、それが怖いから、あんまり優しくしないで」


そういうことか、彼女は前にも同じように優しくしないでって、言ってたな。その時は冗談めかしてたけど、実はそういうところなのか……その気持ちは俺も、俺にも理解できる。だって、昔々、俺も同じようだったから。


「リリィさん、俺ね。リリィさんとおんなじなんだ。俺はリリィさんと同じくらいの頃、5年生の頃ね、母さんがいなくなっちゃったんだ。その時にね、俺は、思ったんだ。それまで、幸せって思っていたけど、もしかしたら、幸せって思わなかったら、こんな事にならなかったんじゃないか。ってね。でもね、それも違うみたいだよ。それは、誰のせいでもなかったんだ。俺のせいでも無かった。そう今は思うようにしている。リリィさんもそのうちそう思えるようになるよ。そう思わなくちゃいけないんだと思うよ」


「そうなの? そうなんだ……佐藤君もお母さんがいないの……」


涙を拭きながら、俺のデリケートな部分を少し披露したら、リリィさんはかえって驚いて俺を見つめている。


「お父さんも消えちゃったよ。ははは」


俺は、笑い飛ばせるだけの時間があったけど、彼女には、まだまだついさっきの出来事なのだろう。彼女の気持ちに寄り添う事が出来ればいいんだが……俺はそうなりたいと強く願った。


せっかく知り合えたのだから、せっかく仲良くなれたのだから……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] 樹本 茂様 前半の「俺」の子供時代のつらいエピソードとつながってきましたね・・・<(_ _)>(*^-^*) ますます続きが楽しみです<(_ _)>(*^-^*) まきのしょうこ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ