20 リリィさんの秘密の場所1
「ほら、佐藤君、天の河!!」
リリィさんは嬉しそうに次々と、目に入る夜景の主役を俺に紹介してくれる。
月の右手には太平洋の水平線から立ち上がる満天の橋、天の河銀河が眩い光のシャワーのように俺達の頭上に横たわっている。
防波堤を歩き始めると、リリィさんに後ろからついていくと、少し、足を引きずっているのが見えた。
「リリィさん、止まって」
俺はそう言って、彼女の反応も待たずに背中から腕の下に手を伸ばし、軽々と抱き上げて、
「お姫様だね」
抱っこした。
まずいかな?
少し驚いた顔をして俺を見ていたが、俺のそんな表情を察したリリィさんは、微笑んで、“行こう”と言う。
300m先くらいに、迂回した道路が防波堤の先に見える。
その真ん中のところで、丁度、車の騒音が聞こえなくなり、波の音だけが響き、左側には、崖の様になった小山の山肌が見えている。
そこは、海が見え、道路からは、こちらが見える事も無い、正面には、きれいな月が見える場所で、車のヘッドライトの灯りも騒音も無縁な場所で、そこまで来ると、
「ここで降りる。少しお話ししたい」
リリィさんは防波堤の海が見える方に腰かけて足をブラブラさせて、俺を見上げ右手でここに座れと差し示した。




