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凪の始まり  作者: 樹本 茂
8月 リリィさんと海(前編)
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8 リリィさんの……

「店長、あの子、店長の知り合いなの?」


美琴さんが俺のテーブルに来て、遠く、ホールの出口のドアを開けて、トイレに行くといって席から立ったリリィさんの後姿を見ながら、グラスを傾けている。


「そうだけど……どうかした?」


「あの子、私のアパートの一階に住んでる子よ。可哀想にね。あんなことになっちゃって」


美琴さんが、俺の表情を伺う様に話し出した。


「なに? どういう事?」


グラスの水割りをやっつけている美琴さんに、説明を求めた。


「店長知らないの? 同じ学校でしょ?」


「知らないって、何よ」

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