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23 真夏の防波堤
「リリィさん、さあ、ホントにこのまま、ここに居たら死ぬんじゃない?」
猛暑である。最高気温35℃の予報。少なくとも、遮るものの無い、こんな防波堤で呑気に釣りをしていい気温ではない。
「なんか私、今日はクラクラしてきた」
「でしょう? 絶対アウトだよ」
7月の下旬、梅雨明け間もなくの猛暑は下手すると命に係わる。風が海風が涼しくない。熱風だ。日差しが変だ。差すようにいたい。防波堤からの照り返しがリリィさんの大き目の麦わら帽子の防御性能を超えている。
「水族館に行こうよ、リリィさん」
撤退だ、退避だ。ふらつくリリィさんを連れて移動することにした。
俺達は年パス所持だ。このまま、こんな酷暑の中、直射日光を浴びてまで釣りをする理由が見えなくなった、防波堤集合を水族館集合に変更した。




