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12 レストラン3
「ここね、お父さんとよく来たの」
「へ~、そうなんだ」
「そう……それより、佐藤君ってさ、モテるよね」
頬杖をついたまま俺を見て、ふざけたように目の奥で何か企んでいる事がありありと分かるように微笑んでいる。
「リリィさん、俺は彼女いないって言ったよね? それにさ、あんまり大人をからかっちゃだめだよ」
子供と思うと腹が立つ、大人思うと何言ってんだと腹が立つ、どっちも一緒か。
「正直に思っただけだよ。きっとモテるよ。なんとなくそんな気がした。優しいもんね。優しいよ……」
相変わらず頬杖をついて外の景色を見ながら、時折、俺を見て話を継いでくる気怠そうなリリィさんからは、子供の表情の様なものは見て取れなくて、何故だろう、大人の憂いを帯びていて、大人でもよく知った者にしか見せないような表情を俺の前でしてみたり、凄く扱いに困る。




