8、9 防波堤にて1&2
俺達はいつもこんな感じで釣りをしている。
「ねえ、なかなか言い出さないけど、学校来いって言わないのね」
言ったら来るんか?
「言ったら来る? 言えば言っただけ遠のくでしょう?」
「え? やだ。何で分かるの?」
わかるわ! 世の中ではな、お前みたいのを天邪鬼って言うんだよ。
時折吹く涼しい風、波の音、それ以外は何もない。俺とリリィさんだけの防波堤の先端。
「佐藤君、彼女とかいるの?」
「いないよ、残念ながら」
「そうなんだ。残念ね」
波の音が聞こえてくる。
「佐藤君?」
「何?」
「ここで、私と釣り始めてどのくらいになる?」
「2か月くらい、平日と週末いつも。雨の日以外」
「もうそんなか……早いね。でも、一人でやってた時よりも楽しい。かも」
「そう言えばさ、俺と初めて会ったとき学校の運動服着ていたよね? 何で?」
「ああ、あれね。天気いいから、洗濯したら全部洗っちゃって、着るもの無くてね。それで着て来たの。しょうがなくよ」
「そうなんだ……よそ行き用のジャージとかじゃあないんだね」
「違うわよ」
波の音がする。
「佐藤君、メヒカリって美味しいよね。あれ釣れないの?」
「あれは深海魚だよ。釣れないね」
「釣れないのか……美味しいよね」
「食べるか? これから」
「うそ! 食べるよ!」
「そこのレストランにあるから行くか!」
「私、お金ないよ」
「俺のおごりだよ」
「行くよ!」




