5 リリィさんの夢2
「私の夢は……素敵な幸せにあふれた家族を作る事……私の家族だな。何かになるとかって何にでもなれる気がするけど、大切な人と一緒に同じ方を見て笑い合えるなんて、本当はそっちの方が難しいんじゃないかなって思うんだよね」
俺の方に急に向き直り、そんな事を言ってきた。俺から丁度、太陽が目に入ってリリィさんの表情が読み取れなくなっている。
12歳の回答か?俺でも思わんぞ。
「私の将来の夢はそういう事、全てはその実現のための手段なのよ。
佐藤君は?」
そう、それね。それが言えたら既に作文にしているよ。
「だから、さっき言ったでしょ。白紙だって」
「そんな事じゃないよ。ホントはあるんでしょう? でも、それが言えない……書けない、書きたくない。だけ、だよね」
お前、超能力者か占い師かなにかか?いや、本当に出てこないんだ。夢を見ることが出来ないのか、あきらめたのか、そもそも、そんなもの無くしたのか……
「リリィさんは兄弟いるの?」
「いないよ。佐藤君は?」
「俺もいない」
「私達、同じ兄妹なしなのね」
「そうだね」
「兄弟がいないと、寂しくない? とか、なんにも出来ない甘えんぼとか、わがままとか、ちょっと何かやれば、兄弟がいない割にはよくやるじゃん。みたく言われない? あれ、頭くるよね。関係ねぇよって言いたい。それに……家族の面倒を一人で見なきゃいけないしね」
ああ、確かにそう言う傾向は否めないな。
「一人っ子って子供に一切責任ないのに、もの凄い言われようだよ。だから、私は子供をいっぱい産むの。私の愛する旦那様の可愛い子供を一杯産んで楽しい家族を作るの。他人にそんな事は言わせない」
お前いくつだよ。




