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凪の始まり  作者: 樹本 茂
2015年8月 凪の始まり(後編)
383/387

30 2016年12月

リリィさんが3年生の冬休みに、


「ねぇ? 家族をつくるわよ!」


「犬か猫でも欲しいの?」


「何言ってんの、家族よ。人間の。

私さ推薦で大学行くじゃない。でもね、来年休学する。それで、赤ちゃん産むよ」


この子はこんな感じで、なかなか思考が俺の随分先をいっている事が有る。

まあ、前からか……


「赤ちゃんって……大学どうするの?」


「大学行ってる間は預けるよ」


「でもさ、大変だよ。その若さで赤ちゃん育てるって……」


「そうね、そうよ。

私はこの通り、セーラー服が超似あう、何処から見ても普通の女子高生だけど---」


いや、最近、大人っぽい外見の、人目を引く、日差しの指す角度次第では、金色に見える背中までのロングを風になびかせて、ややミニスカな色白太ももを晒しながら街行くあなたは、御自慢のセーラー服が……


コスプレ感が半端ないぞ!


そんな事は言えない。

大事なことは、そっと心にしまい込め! 俺!! それがうまくいく秘訣だ。


「でもね、そんな事言ってたら、けんたろー、あなた子供が大きくなるころ死んでるよ」


ああ、言い切った……


「最初の子が来年として、次の子は私が大学出る後だから、6年くらい後になるよ。ほら、けんたろー何歳よ? そっから子供が大学出るのは何歳よ!


もう!

なにグズグズしてたの!

ちゃんと将来のこと考えてた!!」


いやいや、お前、高校生だろう……

話しているうちに自分でヒートアップしてきたようだ……


「だから、早くしたいの!

とっとと産んで、けんたろーが元気なうちに面倒を見させて、私は楽しながら大学に通うって寸法よ!」


マ?


「ホントはね。

一番は、けんたろー に速いとこ家族を作ってあげたいの、もう12月でしょう……


2月、3月は学校に通わないし、卒業式は3月1日で、その頃はまだお腹も目立たないし、気持ちも悪くならないよ。もう作る。解禁よ。ドンドン産んで、けんたろー の家族を増やす。楽しそうでしょ? もう冬休みの間は、つくりまくりだよ!」


不思議なものだ。今までは出来ない様に気を付けていたのに、そんな事おかまい無しになると歯止めが利かなくなる。お恥ずかしい限りだ。


そして、俺達は、次の月に赤ちゃんが出来た。


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