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凪の始まり  作者: 樹本 茂
2015年8月 凪の始まり(後編)
366/387

13 2015年8月 13

声を掛けようとした、その刹那、


「佐藤君……


私……

帰る……


サヨナラ……」


振り向いた彼女は目にいっぱい涙を流し、絞り出すようにそれだけ言って、手を振りほどこうと、もがいた。


佐藤君……


帰る……


寮に?……


じゃない位、ボケの俺にも理解が出来た。


「来て!!」


「いや!」


大声を上げ、俺から逃げようとする彼女の様子を見ていた、人が、人達が……


「大丈夫ですか?」


見知らぬ人達が、声を掛けてきた。


そりゃそうか……


必死の形相で嫌がる女性を無理やり連れ去ろうとしている構図だ。

むしろ、このシチュエーションで誰も心配の声を上げない方が社会として不健全だ。


「ごめんなさい……

ありがとうございます……

この人は……


……


友達で……


喧嘩してただけなんです……」


「そう? 本当なら……良いけど……」


人混みの中、リリィさんの細い手首を掴み俺は、リリィさんにきつい視線を向けられて、次の句を告げずにいた。


見知らぬ他人に腕を掴まれた女性が、必死の抵抗をする、取り付く島もない、ゆとりも無い、もう少し言えば、明らかに俺を拒絶した表情を向けて、視線すら合わせなくなった。


………………………………

こんな表情するんだ……


「サヨナラ」


俺がリリィさんの表情にたじろいだ一瞬に、腕を振りほどき、一気に人波の中に紛れ込んで……


俺は華奢な背中を見失った。


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