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12 2015年8月 12
歩む速度を上げ続ける彼女の背中が、群衆に呑まれ、時折、見えなくなっていく……
あの背中を……
追いかけないと……
俺は……
俺は一生、後悔するんじゃないのか?
「リリィさん!!」
聞こえているのかいないのか、微妙な距離な上に、群衆が発する音にかき消され、俺の叫びなどは手前の数人が振り返る程度ものでしかなかった。
「すいません……」
人混みをかき分け、リリィさんを追う。
「……通ります」
幾人もの人の流れの逆らい、器用に人混みを避けてどんどん先へと進む華奢な背中を俺は追いかける。
腕を……
彼女の左の腕の細い手首を……
俺は優しく、そして、強引に掴んだ。




