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7 2015年8月 7
80万人が集まる大イベント……
道路の車列は全く動かず、歩道には人があふれ、すれ違うのも困難で……
そこに、動く気配のないリリィさんは俺を見ない様に遠くに顔を向けて、明らかに、泣いて、肩を揺らしていた。
人の熱気と、渋滞の車の熱気が防波堤に遮られたそこだけは、真夏の熱帯夜を実感できて、俺の背中に汗がしたたり落ちるのを感じながら、右手で掴んだリリィさんの細い手首だけが冷たく感じて、俺が軽く言った事の罪の重さを感じるには十分すぎて、どう声を掛けて良いか、分からずにいた。




