1 2015年8月 1
夏……
8月の最初の土曜日
「リリィさん、可愛い!」
「けんたろー、そう言うの出来るようになったの?
可愛いって?
知ってるよ!
私が教え込んだんだから! 行こう!」
二カッと笑うリリィさんは、真夏の装いで、ノースリーブのワンピースを着て、現れた。
リリィさんの住む寮の傍で待ち合わせし、俺達は海岸まで歩き向かう。今日は、ここの街の花火大会で、オーナーのご厚意により、指定席に招待されていた。
初めて、リリィさんを誘った、あの花火大会から、あれから5年もたっていた。
高台にある細い道の行き止まりの、女子高生の巣窟から少し離れた場所で待ち合わせをする。
だって、恥ずかしいから……
「けんたろー……
別にいいよ……
こんなとこでコソコソしなくても……
みんな知ってるし……」
俯いたリリィさんは俺の手を取りながら呟いた。
「ああ……そうだね……」
悪いことしてる訳じゃないんだろうけど、気後れするというか……こんなに年の離れた女の子を連れて歩く後ろめたさに俺は……困惑していて……
有体に言えば……
他人の目が気になっていた。
傍から見たら……
どう見られているんだろう……
大人びて見えるせいもあって、高校生に見えないリリィさんは、そういう意味では、まあ、思うほど白眼視されてはいないと思うけど……
「どうしたの? けんたろー?」
「なんでもない」
「そう? つまんなさそう……」
そんな事無いよ、リリィさん……
とっても嬉しいよ。
でも、俺は、その表し方が苦手なんだ。




