29 2015年5月 29
「あんた……
そんな子供なのに……
いろんなもの捨てて……
ここに来たんだね……」
「そんなことないけど……
でも、無駄だったのね……
やっぱり、けんたろーにとっては、私は、ただの同級生の仲良しさん……
だったんだ」
「そうか……
リリィちゃん……
あたし……
謝らせてくれないかな……
ゴメン……
本当に、すいませんでした。
リリィちゃん……
あたし、嘘ついた……
健太郎の苦しい様子を見てて……
今更あらわれたあんたに、言ってやりたくて、嘘ついた。
ポットあらわれて、健太郎の気持ちをかき乱される様な気がして、咄嗟に嘘ついた。
ゴメンなさい。
健太郎は今でも、あんたを待ってるよ。
ずっとずっと待っていたし、これからもきっと待ち続ける。
あいつにとって、待つってのは、きっと私らが思う以上に簡単な事なのかもしれない……
今でも、あいつは、あんたとの約束のあの場所で待ってるよ。
きっと、今もそこにいると思う。
行ってみな……」
「でも……」
「どしうた?」
「でも、やっぱり、けんたろーは私の事……
ただの仲良しさんで、待つのが苦にならないただの気長な人なんじゃ……」
「そうね……
でもさ……
だったらそれ……
あんたのそのネックレス、健太郎のプレゼント……
オーダーで作らせた世界で一つの一品物なんだよ!
リリィちゃん……
ただの仲良しさんに……
男はそんなことしないよ。
男ってのはね、そのプレゼントを渡したときの嬉しそうな女の顔を想像して、贈り物を選ぶんだ。あんたどんな嬉しい顔した?
良い笑顔だったんじゃないの?
そんな笑顔が見たくて、一番、欲しい笑顔が見たくて、あいつは、健太郎は、わざわざ、一品物をオーダーして、そんな当時の子供に送ったのかな?
違うと思うよ。
大好きな女性に、送ったんだと思うけど……
それに、どんな待つのが趣味な奴だって、そんなに長くは待てないよ。
それが、良い証拠だと思うけどな。
わかったら、行って!
時間取らせて、悪かったね。
リリィちゃん……
あたしは若い時に、15年前に全部捨てて、自分でここに来た。
娘と新しい生活をするために、縁もゆかりも無いここにやってきた。
今でも後悔なんかしていない。
あんたもきっとおんなじ気持ちなんだろうってあたしは思う。
そんな時、あいつは健太郎は私ら親子に親身になって世話してくれた。
あいつはそんなやつだよ。
もしも、でも……
あいつが、健太郎が下手打ったら、あたしんとこにいつでも来な。
あんたの事、守ってやる。
あたしが、あいつを絞めてやるから!
安心して、ここで、健太郎にぶつかって……
あんたの決めた人生を進んで……
リリィちゃん、これからはあたしの事、ママと同じに思って甘えて、あんたの味方だから……」




