22 2015年5月 22
「前に会ったの、佐藤さんに!」
「……けんたろーの話はよして……」
「……どうして? リリィちゃんあんなに好きだったじゃない」
他人のものなんか……
私を待ってくれてない人なんか……
「だって、けんたろーはもう、結婚するし……」
「え? 何それ?」
ホントだよ。
「誰と?」
「陽葵」
「……嘘!」
「この間、陽葵に会って聞かされたの……」
「……そうなの……それ、ホント?……なの?
ちょっと待って、確認してみる……」
未海ちゃんがスマホで電話している。
そりゃあ、誰だって驚くよ。
『結城さん、陽葵先生、結婚するの知ってる?』
さっそく、広めてるな……
『知ってるの? 流石ね、で、相手って佐藤さん?』
もう辞めてくれ、未海ちゃん……
その名を聞くだけで鬱になる。
『え? リリィちゃん……』
ああ、ネタ元、誰だって話か?
『ちょっと待って!』
未海ちゃんは、スマホの画面を私に見せ、スピーカーを押して、
「リリィちゃん、聞いてみて、結城さんに」
「やだよ」
「結城さん、もう一回言ってあげて、リリィちゃん聞いてるから……」
『陽葵先生の相手はウチの高校の先生だよ。もっと言えば、私の担任、いっつも、のろけ話聞かされて、癪だから、その話をSNSに投稿しているよ! アハハハ』
ダメだろ……
「ホント?」
『あなたのけんたろーの事なんて、世界中の女子でも、あなたしか興味ないわよ。
あなたのけんたろーも、あなたにしか興味のない歪んだ性癖の持ち主よ!
あなた!
けんたろーが大好きなんでしょう!
あなたは何でここまで来たの?
もう1か月よ!
何を頭いい子ぶってウダウダ考えてんのよ!
遠いところから、ここに来たあなたの情熱をぶつけなさいよ!
もうくだらない。
どう見たって、あの防波堤の住人は、あなたの事、ずっと待ってるわよ。
行って見りゃ分かるわよ!
ああ……
って、分かりやすく分かるから、さっさと行きなさい!
そうじゃ無いと、私が取っちゃうよ!!
いや、嘘、恋のライバルを励ます女の子が言うお約束、言ってみたかっただけ……ゴメンなさい』




