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9 2015年5月 9
「けんたろー」
なんだよ、紛らわしい……
「なんですか?」
前とおんなじこと言いてえんだろ!
防波堤から街寄りに入った地元のショッピングセンターで、今晩のおかずを探していると、雅さんが声を掛けてきた。
「また、御出勤したの?」
「そうですけど」
めんどくせー……
ぶっきらぼうに返した。
「なんだよ! その言い方! リリィちゃんが来ないの、あたしのせいか?」
「そんな事言ってないでしょう!」
「絡むね!」
「絡んでんの雅さんのほうでしょう!」
「ああ、ヤダね。殺伐として、そんなに会いたいなら、あんたモスクワ行ったらいいじゃん! ユー! 行っちゃいなよ!!」
ふん!
言わせて置け……
地元のショッピングセンター……
個人の店が一つの建屋に寄り集まって、ショッピングセンターを形作る。
昔、父さんがやっていた店にも声がかかったが、父さんは入店を断り、やがて先細って店を潰した……




