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凪の始まり  作者: 樹本 茂
2015年5月 凪の始まり(前編)
326/387

9 2015年5月 9

「けんたろー」


なんだよ、紛らわしい……


「なんですか?」


前とおんなじこと言いてえんだろ!


防波堤から街寄りに入った地元のショッピングセンターで、今晩のおかずを探していると、雅さんが声を掛けてきた。


「また、御出勤したの?」


「そうですけど」


めんどくせー……

ぶっきらぼうに返した。


「なんだよ! その言い方! リリィちゃんが来ないの、あたしのせいか?」


「そんな事言ってないでしょう!」


「絡むね!」


「絡んでんの雅さんのほうでしょう!」


「ああ、ヤダね。殺伐として、そんなに会いたいなら、あんたモスクワ行ったらいいじゃん! ユー! 行っちゃいなよ!!」


ふん!

言わせて置け……


地元のショッピングセンター……

個人の店が一つの建屋に寄り集まって、ショッピングセンターを形作る。


昔、父さんがやっていた店にも声がかかったが、父さんは入店を断り、やがて先細って店を潰した……


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