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4 2015年5月 4
4月の中頃……
「けんたろー!」
少女の声が防波堤の先端で虚空を見る、凪いだ海面からは何の音もしない、ゆっくりと小幅な上下するだけの海面を俺は相も変わらず、無心に見つめている。
そんなところに、雅さんとは違う、明らかに少女の、高い声で、俺の背後から声をかけて誰かがいた。
ああ……
どれほど待ったか……
俺も……
正直もう会えないと思っていた。
いや、そんな事はとっくに分かっていた、でも、もしかしたら、明日は、もしかしたら明後日はって、思ってしまって時間を作ってはここに来ていた。
リリィさん……
来てくれたんだ……
俺は振り返った……
ゆっくりだけど……
振り返った……
そこにいるはずの……
リリィさんの姿を確認したくて……
「けんたろー! 久しぶり!!」
……
誰だ……?




