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2 2015年5月 2
今日も俺は防波堤の先端に来ていた。
「けんたろー」
俺が防波堤の先端で釣り竿の先端を眺めているようで、虚空を見ていた時に背後から俺を呼ぶ懐かしい声が聞こえてきた。
「何よ?」
俺がその声の主に振り返り、少しきつめの視線を送ってやった。紛らわしいんだよ、その呼び方!
「まだ、待ってんの? いやー、純愛だね。それか忠犬だね」
おい、俺の純粋な心を汚すな。
雅さんがやってきた。
「どうなんだろうね……」
よっコラショといいながら、俺の隣に椅子もなく防波堤に胡坐をかいて座り、横顔を注視している。
俺は無視しているが。
「もう、何年になる? ケンちゃん」
「まる4年……
5年目……」
海面を見て答える。
「そうか……
そうだね、4年か。何かしら知らせてくれてもいいのにな……
いい女は、男を平気で待たせるんだねぇ」
少し煽り気味だ。ノってなどやるものか……




