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32 別離8
俺は急ぎ、街のバスターミナルへと駆け出した。家から、走って10分。街は喧騒とはかけ離れた物音すらしないゴーストタウンの様な状態で、逃げる人は既に逃げたのだと、久しぶりに外に出た俺は、それで実感した。
バスが10台ほど待機しているターミナルに着くと、そこには、外国人が多数詰めかけていた。その人たちはリリィさんと同じように国が用意している専用機に乗る為なんだろう。
そのターミナルだけは街とは対照的に、安堵と不安の表情を浮かべる人たちの喧騒に支配されてコントラストを鮮明にしていた。
リリィさんの姿を探すも、見当たらず。
『ターミナルにいるんだけど、リリィさん何処にいる?』
メールを出した直後、
「けんたろー!」
俺の後ろから声がする。振り向けば、リリィさんが、笑顔で手を振りながら、
「会えてうれしい」
俺に抱きついて来た。
「もう、バス出ちゃうの。そんなに時間ないの。ごめんね……」
一言、言って胸の中で俯くリリィさんに
「事故が収まったら、また戻って来るのかな?」
俺は、リリィさんの表情から感じ取った。胸騒ぎの答えを求めた。




