307/387
29 別離5
地震が発生したその日から、福島第一原発の周囲では避難指示が出されて、それは時間を追うごとに範囲を広げ、放射線量の数字も刹那的にあり得ない数字を計測することが繰り返し起こっていた。
原発事故は相当に酷い事になっているらしい。
精確な情報などなにも無い。飛び交うヘリコプターの音だけが遠方の発電所の深刻さを感じられたが、国道には既に遠くへ避難しようという車で大渋滞が出来ていた。
俺は、延々と望遠レンズで映し出されている発電所の光景をテレビの生中継で見ていた。
電気が復旧して付けたテレビが最初に映したのは、膨大な数の津波の犠牲者の数と、福島第一原発の今と、深刻さが、深刻さを伝えたがらない政府の会見だった。




