4 奪われた日常4
誰かでろ……電話は繋がった。呼び出し音が鳴っている。
訓練通りなら、今頃、客とキャストの非難が始まっているはずだ。今のシフトは郷田さんとキョートーだ。連絡が付かなくても、彼らを信じるしかない……
鬼塚先生も、外に行くぞと手振りで俺にしきりに指示している。ますます、勢いを増し、衰えるところか、さらにひどくなっているように感じる余震に俺の心も折れて、俺は、あいつらなら出来るはず。自分にそう言い聞かせて、受話器を置き職員室を鬼塚先生と共に後にした。
校庭では全校生徒500人が不安げに、それぞれクラス単位に団子状になって先生と話をしているが、余震が大きすぎて、心の余裕が出てこないような状態に先生も児童も陥っている。有体に言えば、誰もが経験した事のない巨大地震だった。
大地震の話は良く語られるが、巨大な地震一つしか想像していなかった。大きな地震が一回。それだけだった。しかし、今のこの状況は、普段、大きいといわれる様な大きさの地震が震度4から5くらいの地震が、全く途切れることなく襲い続ける状態だ。こんなのまったく想像していなかった。大人の俺でもこれだ、ましてや子供のご学友のショックといったら……普段、威勢のいい男の子から表情が消えて顔色が悪い、女の子は抱き合って泣きじゃくっている。六年生でこれだ、もっと小さな子達の不安といったら、全くの酷い状態だった。
すぐさま、東北地方の海岸には大津波警報が発令された。大津波5m~6m。すぐにも到達予想。先生が携帯で見ていた情報を教えてくれた。店は、海抜5mだ、この時点で海に沈むことが予想された。ああ、俺の家もそのくらいだ。まあ、家には流されて困るものなどは無いから、別に慌てる事では無い。
15時過ぎに一段とデカイ余震が襲ってきた。震度6弱はある。校庭は悲鳴の連鎖、阿鼻叫喚だ。それに、とても寒い。気温は10℃くらいだと思うが風がある。子供、ご学友も着の身着のまま逃げた子達が多い。せめて、服でも取りに戻れたらと思うが、余震がでかすぎて、先生も簡単には判断できないだろう。




