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凪の始まり  作者: 樹本 茂
2月 みんなのたたかい
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14 みんなのたたかい5

私は、その足で校長室で満島先生が先日まで座っていた校長の椅子に深々と背もたれに寄り掛かり私が入って来ても顔色変えずに、明らかに人を見下したような態度を取る教頭に会いに行った。


「本日、私のクラスの児童たちが全員欠席しました。明日来るかさえ分かりません。この事で、私は先日の教頭先生のご決断に問題があったと感じております。それが、この状態をひきおこし---」


私の発言を遮り教頭が、


「先生! それでは、私が悪者みたいじゃないですか?

そもそも、あんな大人を六年生として通わせる事の方がおかしいとは思わないのですか?


義務教育の中にあって28歳でしたか?

そんな者を通わせる根拠が全くないのに、他の先生方からも疑問の声があがっていたのに何故通わせるのか?


全く理解に苦しむ。挙句の果てに、私が悪い?


おふざけも大概に願いますよ。この件は、別の原因で、一つは28歳の小学六年生を当たり前の様に受け入れた満島前校長の責任、そして、六年一組の生徒が欠席した件は先生の指導力の欠如、これにつきます。それを、わざわざこんなことを言いに来て……


時間の無駄です。他にないのなら、もうよろしいですか?」


「教頭先生、まだ何も議論していません。佐藤さんの何がいけないのですか?


彼は勉強熱心で、クラスの信任も厚いです。それをただ、年齢がというだけで、要らないものを捨てるように追い出して……


それが教育なのでしょうか?」


「私は、年齢だけの事を言っているわけでは無いですよ。聞けば、彼はいかがわしい風俗店に勤務しているそうじゃ無いですか?


そんな輩を感じやすい年頃の子供たちの中に置いておく方がむしろ問題だと思いますけど、どうなんでしょうか?」


「それは……


確かに彼はそう言うお店に勤務していますが、だったら、そう言うお店に努める親の子供は学校に通ってはいけないのでしょうか?」


「私はそんな事は言っていませんよ。あくまで本人の問題だと言っているのです」


「でも、彼はクラスで真面目になんでもこなしている他の児童と何にも変わらない勉強熱心な児童なのに……」


不覚にも悔しすぎて涙があふれて次の句を告げなくなってしまった。


「ま、先生がお泣きになるのはいいですけど、もうよろしいじゃあ、有りませんか。既に彼も登校していないのですから、彼自身その程度のお遊びだったのでしょう」


「そんな、彼は絶対に遊びの気持ちで来てなんかいません。いつも、いつも真面目に、恐らくほかの児童よりも真面目に学校に来ていました。彼は、満島校長先生に頂いたチャンスを真剣に受け取って---」


「満島前校長です。水掛け論です。お引き取り下さい。


後は、一軒、一軒児童の家をまわって説得して、登校を促してください。さ、急いで、明日には全員登校するように、今すぐ行きなさい」


教頭は校長先生の机に座り私をあざ笑うように見つめ、外に出ろと手で合図する。


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