41 店長
その次の日……
「……健太郎……お前……ヤッタな」
え?
何故、分かった?
「え? いえ、そんな事無いですよ」
「……おい! お前、俺に嘘つくとはいい度胸してるじゃあねえか? 俺が口に出してるって事は、それなりに証拠が有るって事だぞ。
もう一度聞く……健太郎……ヤッタな?」
店長が俺に凄んでいる。
もはやこれまで。
「……はい」
「……そうか
……そうだな。店の従業員が女を知らねえってのもどうしたもんかって、気にかけてたんだが、子供に、おめえヤッテ来い、っていう親もなかなかいねえし……
考えあぐねていたんだが……
まあ、そうだな、そりゃあ、赤飯たかなきゃな」
「店長……どうして、その」
「……ああ? なんでわかったかって? そりゃあ、秘密だよ。企業秘密って奴さ、ハハハハハ」
事務所から出て待機部屋の前を通ると、
「今日からお世話になる事になった雅でっす! よろしくね! ケンちゃん!」
「れ、レイア……さん」
「違うって、心機一転。昔は全て捨てて来たんだから。
私は雅。
生まれ変わったのよ。何もかも捨て去って」
啖呵切って、まとわりつくなと言ったあんたは、なんだったんだ。俺の純情を返せ。良い笑顔で
鼻歌を歌いながら俺の前にいるこいつ。
「東京での一夜は内緒だぞ! それと代金は貸しにしても良いぞ!」
俺を抱きしめ耳元で小さく呟いた。
東京に見切りをつけ、こっちでの新しい生活を始める新米家族。
レイアじゃなくて、雅さんはこうして、俺達の仲間になった。
そして、この時の俺は、この後、この人と長い付き合いになる事をまだ知らない。




