8 レイアさん2
「健太郎、仕事なれた?」
「慣れましたよ。もう3年目ですから」
「え? もうそんなになる? 嘘? えー」
フロントガラス越しの空をにらみ、昔の事でも思い出しているのだろう、しばし動きが止まっている。
「あ~、確かにそんくらいか……
店に入ったばっかの頃はジャックナイフのような切れ味だったもんね。随分丸くなったね、健太郎」
なんの話だ。俺は食い詰め浪人の様だったが、誰彼構わず襲う様な事はした覚えが無いぞ。
そして、記憶が合致したのか?相変わらずいい笑顔で俺の運転する横顔を見ている。
「あんな小っちゃかった健太郎がこうして車でお迎えに来るなんて、あたしも年取る訳だよね」
何言ってんだか、この人は……
「これから、お店に行きますけどよろしいですね?」
「お! よろしいですよ。良きにはからえ、それより、健太郎、彼女出来た?」
「出来ませんよ、なんですか? ちょっとやめて下さい。セクハラで訴えますよ」
「何でよ、可愛い弟への挨拶代わりに可愛いほっぺをスリスリしてるだけじゃないの」
「相手の同意がなければダメなんです!」
「同意したよね? うん! ほら、同意してんじゃん」
もう、やりたい様にさせるしかない。だってこういう人だから。




