7 クエスト
「先生、篠塚さんの事なんですけど」
俺は担任の陽葵先生にクエストを始めるうえで、彼女の事を聞くつもりで、給食の終わった誰もいない教室でタイミングを見計らって、教室から出て行こうとしてた先生を呼び止めて、それを切り出した。
「篠塚……さん。どういうことでしょうか?」
陽葵先生は驚きを隠すために軽く微笑んだように思えた。俺からその言葉が出るとは考えてもいなかったろうから。
「実は、校長先生から篠塚さんをクラスに戻すように頼まれていまして、陽葵先生にも手伝ってもらえると非常にありがたいのです。ぜひ、お知恵をお借り願えませんか?」
「まあ、そう言うことですか。そうですね。私も困っていたのですが、そうですか、校長先生が……わかりました。どういたしましょうか?」
正直、先生にキレられると思っていた。そんな余計な事をするなと、それは私の仕事だと、訳の分からない奴に生徒を任せる事など出来ないと。ところが、陽葵先生は胸に両手を当てて、嬉しそうに微笑んで俺を見ていた。
あぁ、藁をも掴んだのか……
陽葵先生によれば、篠塚さんは、五年生の四月に転校してきて、二学期の終わりころから出てこなくなった。理由は正直わかっていないようだ。五年生の担任も何度か家庭訪問をしているという事だが一向にそれでも、篠塚さんは学校に出てくる様子が無いらしい。




