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凪の始まり  作者: 樹本 茂
11月 質の悪い奴ら
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7 雅さんの悩み6

「雅さん、何で、俺に相談してくれなかったんですか?」


俺は、そんな事が、俺が事務所に入ってそそくさと雅さんが出ていくという事が、数日続いたある日、郷田さんに了解をとって、早速、雅さんを事務所に呼んで、彼女の気持ちを聞いていた。


今までの俺の流儀だったら、決してこんな事はしなかった。人に深くかかわる事を嫌っていたからだ。俺自身がそうであったように、他人はどうせ他人だ、自分の事は自分でケリをつけるしかないと、子供の時から、自分に言い聞かせて、今までやってきていたからなのだが、俺は、大きな勘違いをしていたことに気付かされた。それは間違いだったと気が付いた。この四月からの小学生生活によって。


そして、俺はそんな俺だからこそ、雅さんの想いに寄り添えることもわかっていたし、ぜひ、そうしたいと強く願った。


「俺が、小学校中退のボンクラだからですか?」


「そういうことじゃ無いよ。ぜんぜん、そんなんじゃなくて……」


「前に、俺に言いましたよね? 運動会の時、水臭い事するなって……俺は、同じ事言いますよ、雅さん。水臭いですよ。もっと、俺を頼ってくださいよ」


「頼るったって、そんなの……」


「そうですね。雅さんの能力の問題でしょうから、俺に相談してもしょうがないって気持ちは分かります。それは仕方がない事だと思います」


少し、雅さんの視線が俯いた。はなっからキツイ言いまわしだったことは理解している。


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