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3 雅さんの悩み2
しかし、
次の日も、そのまた次も、同じように雅さんは郷田さんに教わっては、俺が来ると消えていった。
「郷田さん、雅さん……どうしたんでしょうね」
郷田さんはそれと知らなければ、一見すると、ヒットマンのような、いかつい外見と、鋭い眼光を俺に向け、
「店長、お口は堅い方ですか?」
「口は堅いです。ハマグリ健ちゃんって言われてます。でも、煮るとパカッて開きます」
「………………」
ヒットマンが俺を凝視する。ホンの軽い冗談じゃないですか……イッツ、ジャパニーズジョーク……俺の心中の呟きをよそに郷田さんは、相変わらず、冗談じゃねぇと言う表情を俺に向けている。俺の知っている郷田さんなら、簡単に折れるとも思えないので、
「すいませんでした。口外致しません」
ヒットマンの望んでいるだろう答えを口にした。
「申し訳ございません。店長。それでは……」
と、郷田さんは、重い口を開くのだった。




