28 後悔
おじさんは、只々、泣いていた。
「そうなんだね……お嬢ちゃんありがとう……おじさんも同じ事をしてしまってね……」
おじさんは言葉を詰まらせて声を漏らさない様にしながらも、それは無理な事で大粒の涙を流している。
「後悔……
後悔しか無いんだ……
でも、そうだね。
後悔する、できる様な、それすらしていいもんじゃなくて……
謝るとかじゃなくて……
一番、やってはいけない事をしてしまった者は只々人生の消化試合を送るだけなんだ。
おじさんは、浮かれていた。
若い女の人と一緒になるって、もうじき先が見えてきそうで、仕事でも店を潰して、自信を失って、そんなおじさんに好意を寄せてくれる若い女の人の事を好きになってしまった。
そのせいで、子供と奥さんを悲しませることなんて簡単に想像できたのに、簡単に無視を、分からないふりをしていた。
そして、奥さんは家を出て行ってしまった。
当然だと思う……
酷い、酷いな、おじさんは……本当に済まなかった……本当に……本当に……」
肩を揺らせてとめどなく涙を流すおじさんに、私は何も言えなくなっていた。
「子供も捨ててしまった……
その若い女の人をおじさんは追いかけてここに来て……
浮かれて暮らしていたら、目が悪くなっている事が分かって……
直に見えなくなるって……
どうしようもなくなって、盲学校に入って免許を取って……
丁度その頃、その女の人は違う男の人を作っていなくなった……
でも、いいんだ。当然だと思った。だって、おじさんが福島でした事なのだから……
責める事なんて出来ないね……
でもね……悪い事ばかりじゃないんだ………………
客商売をしていると………………
そうだね……こうやって……
………………
同じ……故郷の人とお話が出来る……今日はとっても嬉しい……とっても……うううううう」
おじさんは嗚咽を漏らして泣き崩れてお話しできなくなっていた。




