124/387
30 未海さん8
一つ深呼吸したお母さんが決心したようにリリィさんをまっすぐに見て、
「リリィさん、私達はリリィさんのお父さんにどれほど感謝を伝えても伝えきれない気持ちでいっぱいで、それとおんなじくらいに……ごめんなさいって思っているの。
毎日思っているの。
それと同じくらいに未海が死ななくて良かったとも思っているのね。
本当に苦しいの。
未海が生きるために誰かが犠牲になってしまった事実がとってもつらいの……
どうやっても取り返しがつかなくて本当に苦しいの。
でもね、それ以上に、未海の気持ちを尊重したいの……だから、今日は本当にごめんなさい……帰ってもらえるかしら……」
涙を滲ませて、呟くように弱々しくお母さんはリリィさんに対して申し訳ない気持ちを伝えたかったのだろう。お母さんはそう言うと、胸の下で腕を組んで下を見て俯いている。
口を真横に閉じてそれを聞いていたリリィさんは、
「未海ちゃん!!
隠れてないで出てきて!!
お願いだから、私と話をしよう!!!」
リリィさんは未海さんの家の玄関先に立ち二階を見上げ声を上げた。