19 リリィさん奪還
「先生、篠塚さんの事は以上です。もう、おそらく、個人での対応には限界があると思います」
「佐藤君ありがとう。ここからは私の仕事だ、ご苦労様。そして、彼女が学校に通えるように最善を尽くす。ありがとう」
俺は、リリィさんに俺の過去の話をして、俺に預けてくれると、彼女のお母さんの事、彼女の学校の事、了解を貰ったその足で携帯から満島先生に報告をした。後は、俺の手を離れ、うまい事大人同士でやってくれれば最高の終わり方が出来る。
「けんたろー、私、けんたろーに寄り添うよ」
リリィさんはすっきりしたらしく、防波堤の上を仲良く手を繋いで歩いている。
「なんで、手繋ぐ?」
「だって、けんたろーは私の見せたくなかった部分まで知っている私の大切な人にレベルアップしたから、だから、私と手を繋がなければならないのよ」
日本語の前後の意味が繋がんねえぞ。
「リリィさん、なら、俺も言うけど、一緒に学校行ってくれる?」
「やっと言ったわね。待ちくたびれたわ。ず~と待ってたっ!」
なんだ、純愛もんのラストみたいな感じだけど。お前行かないって言ってなかったか?
「学校に行っても、私、けんたろーとラヴラヴだから、他の子が近づいたら〇すから」
俺の苦労はまだ終わらないのか?
いつの間に強い海風は収まり、霞がかかっていた海面も晴れ、遠く港や、岬の先端い立つ白い灯台がハッキリと見えて、湿度の少ない快晴の秋空が、防波堤の上を仲良く手をつないで歩く俺達の上一面を覆っていた。




