18.ピュアでちょっぴり愛情表現がオーバーな異国の王子
皆さまあけましておめでとうございます! おもちがおいしい!
今年も変わらぬご愛顧のほど、どうぞよろしくお願いします!
「リリア、飲み物をドウゾ」
ヨウが給仕から受け取ったグラスをリリアに差し出す。
身長が高いのでかなり腰を屈めている。さらりと垂れた黒髪と耳飾りがどこか妖艶な雰囲気を醸し出していた。
浮かべられた微笑にはやや胡散臭さ――具体的に言うなら差し出したグラスに何かしら良からぬものを混ぜていそうなオーラ――が滲んでいるが、漢服風の礼服とそれを着こなす男らしい身体つきからは他の貴族たちとは違うエキゾチックさが立ち上っており、胡散臭さを補って余りある。
普段私に向けているあの気色の悪い眼差しとは一転して、リリアに向けられる瞳には濁った色がない。
まるでゲームの中の「ピュアでちょっぴり愛情表現がオーバーな異国の王子」みたいな顔である。
こんなに澄んだ目が出来るのかお前は。
じゃあどうしていつもあんなにどんより淀んだ仄暗い目で私を見ているんだ。
にこにこと微笑んでいるヨウの顔を見上げ、リリアが戸惑いながらも差し出されたグラスに手を伸ばす。
が、そのグラスはリリアの手に渡る直前で、するりと零れ落ちた。グラスが宙を舞い、このままだと――
「ッ!」
「オウ、危機一髪デスね」
しかし、そのグラスは空中で見事に受け止められた。
中身のワインも重力に従って揺れ動いたが、最終的にはグラスの中に納まった。これなら豆腐屋の親父も及第点をくれるであろう。
そのグラスをキャッチしたのは、ロベルトだった。
長い手足と持ち前の反射神経、そして動物的な勘をフル活用して、リリアのドレスが汚れるような事態を未然に防いでみせた。
一見地味だがこれはかなりの難易度である。技自体のポイントは低いかもしれないが、芸術点を評価したい。
グラスを手にしたロベルトはリリアの背後にぴたりと寄り添うように立ち、今にも唸りだしそうな顔でヨウを睨みつける。
普段騎士団で叩きこまれた騎士らしい所作も相まって、姫を助けに来た騎士らしい振る舞いにも見えた。
「貴様、どういうつもりだ」
「ノン! 手が滑っただけデス!」
「リリア嬢のドレスが汚れたらどうする」
「ン~、そうデスね」
怒られても全く反省の色を見せないヨウが、ちらりとロベルトに視線を向けてから、リリアに顔を近づけてにこりと微笑んだ。
「責任を持ってワタシが新しいものをご用意しマス」
「離れろ」
ロベルトが低い声で命じる。
それを受けて、ヨウは「ああ怖い」とでも言いたげにわざとらしく両手を上げて身を引いた。
リリアを守るように肩を自分の方へと引き寄せ、ヨウとの距離を確保しながら、ロベルトが苦々しげに言う。
「こいつは信用ならない。貴女にもしものことがあったら俺は、」
「信用? それならアナタの方が下心があるのでは?」
「何だと」
にやにやと揶揄うような笑みを浮かべるヨウと、今にも掴みかかりそうなロベルト。
リリアの頭上で繰り広げられる険悪なムード。
リリアはおろおろしているが、女の子というのは基本的に「私のために争わないで」的な展開が好きなものだ。
もちろん現実であればそんな面倒なことに巻き込んでくれるなと文句も言いたくなるところだろうが、こと二次元においては根強い需要がある。鉄板ネタである。
これには2の主人公もニッコリだろう、と考えたところで脳裏にディーの微笑みが一瞬過ぎっていった。
実の父から王位を譲り受けて早々に同性婚を法で認めてしまった某腐女子王女――ある意味で公約通りではある。この有言実行っぷりは我が国の政治家の皆さんにもぜひ見習っていただきたい。もちろん別の政策において――を頭から追い出して、リリアに視線を戻す。





