15.完全に「無」の顔をしていた
メリークリスマす皆様もメリークリスマさない皆様もこんばんは。クリスマスイブですね。
更新話は特にクリスマスらしさはないですが、ちょうどパーティーが始まっております。
現場からは以上です。引き続きお楽しみください!
それはどよめくだろう、と思った。
ただでさえでもツチノコ……もとい大聖女という唯一無二の属性がある存在が、さらにこの国の独身男性のなかで一番身分の高い人間と、次に身分の高い人間を両手に携えて現れたのだ。
どよめくなという方が無理な話である。
しかも二人の男にエスコートされながら入場するなど、異例の事態だ。
下手をすれば男好きだ恥知らずだと陰口を叩かれてもおかしくない。
しかし……両側を固める二人の身分と、そして。
リリア自身の纏う雰囲気が、それを許さなかった。
普段の彼女のイメージとは違う、黒を基調にしたオフショルダーのドレスは肩と背中がしっかりと開いていて、美しいデコルテとうなじが惜しげもなく晒されている。
にもかかわらずいやらしさを感じさせないのは、金糸やパールをふんだんに使ったドレスの装飾があまりに煌びやかで美しく豪奢で、迂闊には手を出せないような、芸術作品のように彼女を彩っているからだろう。
アップスタイルの髪もより落ち着いた大人っぽさを演出しており、イヤリングと揃いのダイヤがきらきらと光を反射して、まるで彼女自身が輝いているかのようだった。
そしてそれだけ美しく着飾ったリリアの表情は、この国の王太子と第二王子というアクセサリーを従えてもなお、凛と澄ましたもので……そこに自慢や勝ち誇ったような様子はまったく見られない。
まるで両脇の男たちには興味がないのだと、見ているもの全てに告げるような。
早い話が、「無」であった。
完全に「無」の顔をしていた。
人間そんなに「無」なことがあるかと聞きたくなるくらいだ。何なら顔が死んでいると言ってもいい。
しかしなまじもともとの顔が千年に一度の美少女な故に、不思議と凄みがある。
このくらいのことでは動じませんよ、というアピールにすら見える。ラスボス感がものすごかった。
おそらく実際のところは本当に心の底から「無」なのだろうが。
リリアの右手を取るのは王太子殿下だ。
いつもの王太子スマイルを貼り付けている貌が麗しいのは当然として、身につけている盛装も「盛」の字がしっくりくるくらいに華やかだ。
光沢のある淡い紫がかった生地のフロックコートは彼の白磁の肌をこれでもかと際立たせているし、首元を彩るクラバットもシャンブレー生地のように光を受けて色を変える素材が使われているようだった。
淡い色合いながらもすっきりとまとまったシルエットが華奢な身体を強調している。
ロイラバ2にカメオ出演的に現れた際の立ち絵同様に、幾分伸びた髪をゆるく三つ編みにゆわえている姿も、どこか気品に溢れている。
対してリリアの左手を取るのは、ロベルトである。
散歩をせがむ大型犬のような忙しなさはなりを潜め、やたらと落ち着いた雰囲気を纏いながらも気遣わしげな眼差しをリリアに向けており、口元に浮かぶ微笑みもどこか誠実な印象を受ける。
グレーのセットアップは王太子殿下の纏うものと比べれば幾分シンプルだが、それゆえに彼のスタイルの良さを存分に引き出していた。
普段よりもしっかりとセットされた髪と、瞳の色と合わせた若草色のタイがよりいっそう爽やかな雰囲気を感じさせる。
三人が揃いも揃って顔面偏差値が高い。まさに美男美女。非常に絵になる。
そして王子たちからの手厚いエスコートを受けながらも、それがまるで取るに足らないと言わんばかりの……ドキドキするでも、得意げになるでもない様子でしゃなりしゃなりと歩く大聖女。
ちらりと隣にいる巫女候補……ユーリの表情を窺う。
目を見開いて、リリアたち3人を凝視していた。
その様子に、内心でほくそえむ。掴みは上々、だな。
正直ユーリが私を攻略しようとしていたと分かっただけでかなりせいせいしたというか、目的の大半は果たせたような気になっていたが……ここからが本番だ。
追加点がどれだけ入るのか、楽しませてもらうとしよう。





