8.少々ねっとりしていますが、及第点かと
モブどれ概念グッズことくまのぬいぐるみ他、モブどれステ関連の事後通販締め切りは明日11/30までとなっております!
詳しくは活動報告に写真なども載せていますので、気になる方はぜひご覧ください。
何故無視するのかとリリアの顔を覗き込めば、完全に一時停止していた。
目の前で手を振っても、指を鳴らしてみても反応がない。
「リリア?」
「っは!?」
仕方がないので猫騙しよろしく手を叩きながら声を掛けると、やっと我に返った。
そしてきょろきょろと周囲を見回した後、ほっとしたように胸に手を当てて息を吐く。
「ああびっくりした、も、もう驚かせないでくださいよぅ。今エリ様に『仲良しですよ』って言われたかと思っちゃいました」
「言ったけど」
「言ったけど!!??」
ぎゅるん、と音がしそうなくらいの勢いでこちらを振り向くリリア。
言ったけど、だからなんだよ。
リリアは振り向いたそのままの勢いで私に詰め寄ってくる。
「ど、どどど、どうしたんですかエリ様、その突然のデレは!!?? どっかに頭とかぶつけました!!??」
「君は私を何だと思ってるんだ」
「わたしを塩対応で喜ぶチョロ女だと思ってる人」
それは否定しない。
リリアもヨウも塩対応でも喜ぶ――何ならヨウは塩なほど喜ぶ――ので手軽だなぁとは思っていた。
だからこそ時々無敵の人化するのは勘弁してもらいたいが。
驚愕の眼差しで私を見上げるリリアに、やれやれと肩を竦める。
「別に仲が悪いとか言ったことないだろ」
「つまり結婚ということですね?」
「接続詞の使い方間違ってるよ」
何が「つまり」だ。
この場合どの接続詞で繋いだところで誤用であることは間違いない。何故なら結婚ではないからである。
オタクの悪いところが出ているリリアは放置することに決めて、先生に向き直った。
「護衛対象が近くにいた方が護衛もしやすいでしょうから」
「そりゃそうかもしれないけど。ちやほや、ねぇ」
先生が目を細めてリリアを眺める。
ゲームのハーレムエンドには参加していなかったので実際のところ正解は分からないが……ダウナー系年上教師キャラ路線で行けば大きく外すことはないだろう。
あくまでメインは無印の攻略対象たち、先生は福神漬けのようなものだ。
さほど大きく動く必要はあるまい。
「慈愛の眼差しを向けていただければ、それで」
「そんな目したことあったかね」
「それは、ほら。小さい女の子を見る時とか」
「あのねぇ」
先生が首の後ろを痛めたかのような気だるげなイケメンポーズを取りながら、不満を隠しもせずにため息をついた。
「おれにはそういう趣味はございません。この話何回目よ。どうしたら信じてくれるわけ?」
そんなことを言われてもロリコン淫交教師であることは今更疑いようのない事実である。
他にどのような視線を向けるべきかとんと想像がつかなかった。
そもそも「慈愛」というマイルドな表現にとどめているだけ優しいと思ってほしいくらいだ。
もしロリコン淫交教師という肩書きそのものを根底から払拭したいのであれば、相当の方向転換が必要になる。
そのあたりを考慮して、「どうしたら」への回答を口に上す。
「……年上の女性と結婚されたら、信じるかもしれません」
「それは――」
先生が黙った。
黙ってしまった。
黙ってしまったらもうダメだろう、これは。
実質打つ手なしの降伏宣言だ。
「――無理だろ」
「………………」
「いや年上がどうこうじゃなくて。こういう仕事じゃそもそも結婚なんて」
「………………」
どんなに言葉を重ねられてももはや言い訳にしか聞こえないフェーズに突入している。
私とリリアが言外にそれを目つきで表現すれば、彼は観念した様子で軽く両手をあげた。
「はいはい、分かりました。おれはどうせロリコンですよ」
半ばやけっぱちの様子で言った先生が、ふっと背筋を伸ばした。
普段丸めている背中がしゃんと伸びるだけで、視線が近くなる。
彼はそのまま手を伸ばしたかと思うと、私の頭をぽんと撫でる。
こちらを覗き込むように見つめる眼差しにはやさしさが滲んでいて……まだ私がエリザベス・バートンだった頃の記憶が一瞬、脳裏をよぎった。
「……これでいい?」
「ええ」
頭に置かれた手をさりげなく振り払いながら、笑顔で応じる。
本当に記憶の中にある表情とよく似ていた。即興でここまで出来れば上出来だろう。何故リリアではなく私にやるのかは謎だが。
なお、慈愛を込めた眼差しでちやほやすることを要求した結果、やはりそれが幼い女の子への対応とそっくり同じであったことについてはこの際触れないものとする。
いくら大人になったと言ってもこちらはまだまだモラトリアム真っ只中の多感な若人である。深く考えると情操教育によろしくない。
「少々ねっとりしていますが、及第点かと」
「ねっとり……」
「エリザベス! ワタシは」
「お前はジットリしてる」
「ジットリ……」





