7.「仲、良いですよ」
モブどれの舞台(略称:モブどれステ)、無事に全公演が終了しました~!!
事後物販が始まっておりまして、その中に「舞台はそんなに興味ないけど…」という方にもご紹介したいグッズがあるので活動報告を書きました。
気が向いたらそちらもご覧いただけると幸いです。
ため息が聞こえて入り口の方を見れば、珍しくきちんと制服を着たフィッシャー先生が立っていた。呆れた様子で私の顔をじろりと睨む。
「エリザベスちゃん、こんなとこに聖女様連れてくるなって何回言ったら分かるのよ」
「顔パスでした」
「お前らね……」
ばつが悪そうに笑う第一師団の面々を見回して、さらにもう一つため息を吐いた。
リリアに怪我を治してもらったことのあるメンバーも多いので、顔パスも宜なるかなというところだろう。
ここではちゃんと主人公力が発揮されているらしい。
先生の顔を眺めて、ふむと思考を開始する。
先生が攻略できるようになるのはファンディスクからだ。ロイラバ無印のハーレムエンドのメンバーには彼は含まれていない。
だが……まぁ乗りかかった船だ。
どうせ聖女の護衛でヨウと一緒に忍び込む予定だろうし、こちら側に引き込んでしまって差し支えないだろう。
むしろ2の主人公の驚きはより大きくなるかもしれない。
ノーヒントでハーレムエンドに辿り着いた上にファンディスクのキャラまで落としているとなればその評価は計り知れない。
実プレイで不可能な領域に到達してこそ、我らが前作主人公が彼女を凌駕している様を見せつけられるというものだ。
そう結論付けて、リリアの脇腹を肘で小突く。
リリアがきょとんと目を丸くしてこちらを見上げた。察しが悪いな。
「ロリコンには君の方が良いって」
「エリ様。わたし22歳です。成人女性です」
「出会った頃とほとんど変わってないだろ」
「変わってますよ!!」
リリアが憤慨した様子で頬を膨らませる。そんな22歳がいてたまるか。
そういう仕草が子どもっぽいのだと胡乱げな視線を向ける私に、リリアはだばだばと慌ただしく動いた挙句に謎のポーズを取った。
「ほ、ほら!! 感じてくださいよ大人の色気を!! うっふーん!!」
「語彙が五歳児」
「ぐぎぎぎぎぎ」
今度は悔しそうに歯ぎしりをしている。その有様で大人の色気が出たら誰も苦労しない。
しばらく文句ありげに私の顔を睨んでいたが、白けた視線を浴びて諦めたのか、がっくりと肩を落とした。
「うぅ。いつになったら大人のレディになれるんですかねぇ」
「君はずっとその感じで美熟女は経由せず、ある日突然『カワイイおばあちゃん』になるタイプだと思うよ」
「こ、怖いことを言わないでください!!」
「これは失礼、マダム」
そう嘯いて見せると、リリアはまた不満げに唇を尖らせた。
怖いことも何も事実である。
若い頃に老けて見られるタイプはいつか実年齢が外見に追いつき、何なら途中から若く見られるようになったりもするが、もとが童顔の女性はだいたい「それまで若く見えたのにある日突然おばあちゃんになる」システムだ。
それまで散々幼く見られるのだからそのくらいのハンデは享受してしかるべきだろう。
うじうじ俯いて指いじりを始めたリリアは放っておくことにして、先生に向き直った。
「先生も一枚噛みませんか? どうせ警備で駆り出されるでしょう」
「おじさんとしちゃそろそろ引退させてほしいもんだけどねぇ」
「グリード教官が現役の内は通用しませんよ、それ」
「あの人元気すぎんのよ……」
訓練場ではのんべんだらりとしているが、先日またどこからか訳アリの人間を拾ってきたと聞いた。
どうせ面倒が見切れなくなるのだから、そろそろその悪癖は落ち着かせてほしいものだ。
「今度は何の遊び?」
「大聖女の威厳を取り戻すために、リリアをちやほやしていただきたく」
リリアの肩を押して先生の前に差し出す。
まぁ取り戻すも何も元から持っていないと言ってしまえばそれまでなのだが。
先生は無精ひげを擦りながら私の顔とリリアのつむじを見比べて、やれやれと肩を竦めた。
「お前らほんと、仲良いね」
「はい」
先生の言葉を首肯する。
「仲、良いですよ」
「……………………」
リリアが沈黙した。
先生も第一師団の誰も何も言わないので、一瞬その場に沈黙が満ちる。





