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モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました(書籍版:モブ同然の悪役令嬢は男装して攻略対象の座を狙う)  作者: 岡崎マサムネ
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4.婉曲表現の「やかましい」

「騒がしいと思ったらきみたちか」


 いかにもロイヤルめいた声と気配に振り向くと、王太子殿下が近衛を付き従えてこちらに向かってきた。

 近々即位を控えているだけあって、いつもに増してきらきらしいご尊顔で微笑んでいる。

 が、その張り付いた笑顔の奥の瞳は笑っていない。


 コツコツと靴の踵を鳴らしながら近づいてきて、私たちの顔を見回す。


「ここは同窓会会場ではなかったはずだけれど」

「おや。同窓会なら弟君もお誘いしなくては」


 婉曲表現の「やかましい」を躱しながら、脳みそを働かせ始める。


 逆ハーレムエンドを演じるのであれば、王太子殿下の協力も不可欠だ。

 ゲーム内では高難易度に設定されたキャラクターだ。それを落として、なおかつ単独エンドを選んでいないというところにインパクトがある。


 元気いっぱい暴走機関車と化しているもう一人の王子と比べて、王太子殿下は基本的にはゲーム内の殿下との差は小さい。

 ゲーム本編の時分には短かった髪もすっかり伸びているし、2でちらりと出てきた時には健康体で、かつロベルトとも和解している設定だった。

 つまりはほぼ2で出てきた状態に帰結しているといっても過言ではない。特に凝った演出は必要ないが――協力をどうやって取り付けるか。


 余談ではあるが、乙女ゲームの続編に前作のキャラクターがカメオ出演的に登場するとき、やたらと髪が伸びているのはあれはどういった理由なのだろう。

 そりゃあ乙女ゲームの世界観で髭を生やしたりシワを増やしたりして加齢を表現することは出来ないだろうが――別のニーズ向けのゲームになってしまう――時間経過を表すのに便利だから、ということなのだろうか。


 いや、伸びたら行くだろう、床屋に。ないしは美容院に。

 エンディングが終わった瞬間に美容院に行けない呪いにでもかかってしまうのか。


「ちょうどよかった。殿下にもご助力をお願いしたいことがありまして」

「お願い?」

「リリア嬢が」

「ホワッツ!!??」


 リリアの肩を掴んで前に押し出した。

 殿下がきょとんとした表情でリリアを見下ろす。しかしそれは一瞬のことで、殿下の瞳はあっという間に冷ややかに細められた。

 隠そうという気すら感じられない冷気に当てられて、リリアがその場で縮み上がる。


「え、エリ様!! ちょっと!! なんでわたし!!」

「アイザックには私が頼んだんだから、次は君だろ」

「持ち回り!!!???」


 リリアがまた「ほうれんそう!」と叫んだ。

 時々「おすし」とか鳴いているし、そこだけ切り取ったらまるで食べ物の名前でしか会話ができないキャラクターのように思える。そんな主人公は困るが。


「むりです、むり、見ました? あの冷たい目!!」

「大丈夫、主人公力の見せどころだよ」

「こんな時だけ悪役令嬢力発揮しないでほしいんですけど!!??」


 リリアがぴぃぴぃと泣いていたが、私が手を離す気がないのを理解すると、がくりと肩を落とした。

 そしておずおずと顔を上げて、王太子殿下に向き直る。


「えーっと……わ、わたし、ただいま巫女候補のユーリさんにたいそう馬鹿にされておりましてぇ」

「ああ、聞いているよ。そう落ち込まないで。威厳というものは一朝一夕で身に着くものではないから」


 笑顔でぐりぐりと傷口に塩を塗り込むようなことを言う殿下。

 ぴり、と、一瞬でリリアの纏う空気が変わる。


 コミュニケーションのつもりなのかは知らないが、殿下はリリア相手に容赦のない皮肉を言ったりするので、その度に空気がぎすぎすしたものになる。

 さすがに二十代にもなって「好きな子には意地悪しちゃう」というわけでもないだろうが……いや、どうだろう。割と拗らせた恋愛をしそうなタイプなので、断言はできない。

 ぴりついた空気を纏いながら、リリアが顔を上げた。


「で、ですので、言っちゃったんですよ」

「何を?」

「王太子殿下とは『好敵手トモダチ』だって」

「は?」


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― 新着の感想 ―
好敵手と書いてトモダチ、まぁあながち間違えではないのか?
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