プロローグ
モブどれ書籍7巻&コミカライズ3巻&ポストカードセット第2弾が本日(11/1)に発売になりました!
やった~!! 詳しくは活動報告にいろいろ書きましたのでご確認いただけますと幸いです。
そしてそして、舞台も11/20に上演予定!! いろいろ盛りだくさんの11月!!
というわけで、なろう版も少しだけ番外編をUPしていこうと思います!
しばらく土・水の週2回更新でやっていければなと思いますが、さっそく遅刻していますので……あたたかく見守っていただければ幸いです。
時系列としては、前回更新の「はじまりのエピローグ」に至るまでのお話です。
ロイラバ2が始まるくらいの頃合いですね。
※ エリザベスのお相手が誰かが分かる、みたいな話ではありません。いつもみたいにわちゃわちゃドタバタする感じのお話です。すみません。
そこのところご了承いただきまして、OKだよ~、という方だけどうぞお進みいただければと思います。
訓練場の仕事を済ませて教官小屋に戻ると、普段ここにいない人物が紅の髪を振り乱しながらテーブルに突っ伏して、うなうな不満げな声を出していた。
主人公としてどうなんだという仕草にため息をつく。
「誰です? 部外者入れたの」
「いや聖女様を追い出せるわけないだろ……」
「外で待たせるのも可哀想だしなぁ」
教官連中を見渡すと、皆困った様子でリリアを遠巻きに眺めていた。
扱いとしてはほぼ珍獣のそれである。世が世なら「シッ、見ちゃいけません!」とか言われるタイプのアレだ。
珍獣もといリリアが私に気づいて勢いよく顔を上げる。
そして頬を膨らませながらばしばしと机を勢いよく叩いて不満を全身で表現した。
「エリ様!! もう聞いてくださいよ!! 2の主人、げふんげふん、巫女候補の子がひどいんです!!」
巫女候補、と言われて例の2の主人公が頭に浮かぶ。
何度か会った限りでは、非常に主人公然としたかわいらしい女の子だった。
――いや、かわいらしい主人公を演じようとしている女の子、というのが正しいのか。
これでも攻略対象を演じることに心血を注いできた身だ。その人間の振る舞いが本人のもともとの気質によるものなのか、それとも何かしらの意志に起因するものなのかくらいは判別がつく。
あれは打算と自信に裏打ちされた「かわいらしさ」だ。
単に男に好かれる女の子を演じているだけの可能性もあるが、リリアや私のことを加味すると、転生者である可能性も捨てきれない。
そのあたりを思案しながら、リリアの向かいの椅子を引く。腰かけながら、つむじをぐりぐりと突いてやった。
「それで、何がひどいんだよ」
「とにかくわたしの扱いが!! 聖女に対する敬意ゼロなんです!!」
「みんな別に君に敬意とかないだろ」
「あ、あるもん!!!! 教会では!!!! あるもん!!!!」
リリアがじたばたと机の下で足をばたつかせた。
逆に言うと教会以外ではないということである。
やれやれ、学園を卒業して教会に就職して数年、大聖女が板についてきたと思ったのだが……この様子ではまだまだ聖女の威厳を身に着ける日は遠そうだ。
「せ、聖女様、俺たちもありますよ、敬意。な?」
「ありますあります、たぶん」
「オレンジジュース飲みます?」
ふてくされているリリアを気遣った教官たちがジュースを出してきた。
リリアはちらりと顔をあげると「アリガトウゴザイマス……」と小さな声でお礼を言う。男性嫌いもまだまだ改善の余地がある。
ひとつため息をついたところで、グリード教官が私の肩をとんとんと叩いて耳打ちをする。
「隊長、いじめるなよ」
「教官こそ甘やかさないでください」
「んなこと言っても……可哀想だろ」
マゾヒストのくせにリリアを気遣う教官たち。
こちらこそ「そんなことを言われても」という気分だ。私とリリアのコミュニケーションはいつもこの調子である。
肩を竦めながら、教官に言う。
「リリアはこれが嬉しいんです」
「語弊!!!! 語弊しかない件!!!!」
「嬉しくないの?」
「嬉しいですけどぉ!!!!???」
「ほら」
「痴話喧嘩は他所でやってくれよ」
ため息をつかれた。誰が痴話喧嘩だ。
教官たちが呆れた様子で小屋を出ていく。どうやら気を遣わせてしまったらしい。
手短に済ませるかと、リリアに向き合って話の続きを促す。
「何かもう、女子に嫌われる女子、って感じなんですよぅ! 攻略対象の神官様と扱い違うのは、ちょっとはしょうがないとは思うんですけど……男の前ではぶりっこして、わたしとかシスターのことはもう、モブ扱いっていうか、路傍の石扱い、っていうか」
「モブ扱い、ねぇ」
ふむ。
リリアはどちらかというと親しみやすい聖女だとは思うが、――2の主人公が彼女を軽んじているというのが少々、私の癪に障った。
「それはちょっと面白くないな」
「そうですよね!?」
「君に選ばれた私まで格が下がってる感じがする」
「そこですか?」
リリアの問いかけに頷いた。
それなりに紆余曲折があり苦労して友情エンドに落ち着けたのに、それを主人公まるごとモブ扱いとはいただけない。
彼女は自分こそが主人公だと信じて疑っていないからこそその態度なのだろうが、無印あっての2だということを忘れてはいけない。常にオリジンへの敬意は必要だろう。
再び巫女候補の顔を頭に思い浮かべる。
私に対してもとても愛想がよかったし、勇者候補の2人とも、神官ともバランスよく好感度を上げている印象だ。
――もし、彼女が転生者なら。
目指しているのはおそらく――ハーレムエンドだ。
リリアの威厳とやらを取り戻す方策に思考を巡らせる。
お相手がどうかは知らないが、こちらは転生者。しかも一足先にこの乙女ゲームの世界で生きてきたノウハウがある。
ここは年の功というものを見せてやろうではないか。
じとりとまた不満げな顔をしているリリアに向かってにやりと不敵に笑いながら、告げる。
「それに――前作主人公って、強い方が燃えるだろ」





