40.やっぱり聖女パンチしておけばよかった(リリア視点)
「3日」
「はい?」
「3日だ」
王太子殿下が、さっきまでの取り乱し方が嘘のようにクールに、特務機関総司令ポーズまで決めながらきっぱりと言いました。
本当に、さっきまでピーピー泣き喚いていた人と同じ人とは思えません。
エリ様に見せてあげたいくらいでした。
しまいには「きみたちに助けられるなんて屈辱だ」とか言われたのでやっぱり聖女パンチしておけばよかったです。
ロベルト殿下は一旦近衛騎士さんに取り押さえられたものの、王太子殿下の記憶が戻ったので無事解放されました。
大事にならなくてよかったです。本当に。
王族じゃなかったら本気で許されないかもしれないやつです。
なお、ロベルト殿下の供述によると「扉ではない場所から通るなら良いと思った」とのことでした。
この人の前世はパワー系一休さんなのでしょうか。
王太子殿下が指パッチンをすると、どこからともなく一人の男が姿を現します。
その人物に、見覚えがありました。
カイン・フィッシャー先生。
学園の教師というのは世を忍ぶ仮の姿、その正体は、王家直下の隠密部隊、第一師団の凄腕騎士です。
正体を知っていれば、どこからともなく忍者のように現れるのも納得、なのですが。
「フィッシャー先生!? どうしてここに!?」
大袈裟に驚いてみせるロベルト殿下。
いやこの前天下一武道会で会ってましたよね??
第十一師団の騎士として、わたしのゾンビ軍団倒しちゃってくれてましたよね?? まだ許してませんが????
あんな仮面一つで分からなくなっちゃうなんて、みんなして何をふざけてるんだろうと思ったのですが……どうやら本当にあれで正体が隠れているようでした。ばんなそかな。
フィッシャー先生は素知らぬ顔をしています。自己紹介をするつもりはないようでした。
「第一師団に緊急用の経路を案内させる。途中に換えの馬も準備されているから、最短で西の国まで着くよ」
「さ、最短というのは、つまり」
「だから、3日。馬車を使わずひたすら馬を走らせ続ければそのくらいで着く」
それはつまるところ、三日三晩休まず走って行けという命令なんじゃないかと思うのですが。
エリ様のことを最後に思い出したくせに態度が大きいです。その上ブラックです。
エリ様が就職先として近衛は嫌だと言っていた理由が垣間見えた気がします。
「王太子殿下。十三の師団長を動かせませんか」
「ああ、そうだね。聖剣を持ち帰ることを考えたらその方が確実だ」
アイザック様の言葉に頷いて、王太子殿下がもう一度、指を鳴らしました。
もう一人、男が現れます。
こちらも見覚えのある人物……というか、ヨウでした。
最近フィッシャー先生と一緒に行動しているようなので、それはそうですよね、という感じなのですが。
「ヨウ・ウォンレイ!? お前が、どうして」
アイザック様がオーバーリアクションで驚愕を表現します。
いやだから会ってますよね? 天下一武道会で。
第十三師団の少年漫画にしか存在を許されないみたいなヤバい人と戦ってけちょんけちょんにされたところ、みんな見てましたよね??
仮面は置いておくとしても、ヨウとか喋り方あんなに片言なんだからさすがに分からないは通用しない気がするんですけども。
仮面のシステム、謎すぎます。





