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11.魔女の怒りのボルテージは最大

 だいたい、男に捨てられて恨みつらみを抱えている魔女を倒すのが勇者と巫女のカップルの「真実の愛のパワー的な力」とか、魔女は前世で一体どんな罪を重ねたんだと聞きたくなるぐらいのえげつない話である。業が深すぎる。

 いや、そりゃあ悪事をしたからこその悪役で、敵キャラではあるのだが。


 自分を倒しにバカップルが現れた時点で魔女の怒りのボルテージは最大なのではないか。死んだら怨念になりそうな気がしてならない。

 一件落着ハッピーエンドというのなら、もうちょっと安らかに眠れるように葬ってやったらどうなのだ。


「エリ様はモブにしておくにはもう濃すぎるんですよ、キャラが」

「モブじゃなくてもいいけど、……サブキャラぐらいでちょうどいいかな」


 ふと窓の外を眺める。馬車の外で、夕闇の迫る景色が流れていた。

 一日の終わりが近い。夏休みの終わりももうすぐだ。


「ほら、いるだろ。こういう当て馬キャラ」

「自分で言いますか? それ」

「主人公に大した理由もなく優しくして味方をしてくれるやんごとない身分の男。主人公への好意をちらつかせて攻略対象のことを焚き付ける仕事をしたり、お助けキャラ的に物事を解決するのに手を貸したり。女の子慣れしていないとか、本命にどう接すればいいかわからない攻略対象にアドバイスしてやったり。こう、制作サイド的に動かしやすいからやたらと出張ってくるけど、最終的には雑に主人公の親友あたりとくっついたりする」

「すごい……既視感がすごい……」


 リリアが両手で口を覆って呟いた。

 うん。私もものすごく見覚えがある。

 

 ゲームの期間も終わったことだし、悪役もそろそろお役御免だろう。これからは神様視点……というかゲームのシナリオライター視点で扱いやすい便利なキャラクターとして、時に雑に、時においしく扱われつつ生きていくのも悪くない。


 そんなことを考えながら遠くを見ている私をじっと見つめていたリリアが、ふっと真顔になって言った。


「そういえばエリ様」

「何?」

「宿題終わりました?」

「思い出させるなよ……」


 眉間を押さえて呻く。

 思い出しかけたのを誤魔化そうと、せっかく遠くを見て現実逃避をして考えないようにしていたのに。


 そう。夏休みが終わるということはすなわち……宿題の提出期限がくることと同義である。

 そもそも毎日のように補習に駆り出された挙句宿題まであるというのは明らかにオーバーワークだ。

 何故だ。夏休みじゃないのか。


 「休み」なのにこんなに勉強させられるなんて、看板に偽りがありまくりだ。虚偽広告である。

 広告機構とかに怒られてほしい。

 また現実逃避をしかけた私を、リリアの素っ頓狂な声が引き戻す。


「まだ終わってないんですか!?」

「アイザックに写させてもらうから大丈夫」

「自分でやる気がゼロな件」


 じとりと私を見ていたリリアが、急に尻の位置を動かして距離を詰めてきた。

 しなだれかかりながら、上目遣いで私を見上げる。おお。近くで見ても新鮮に顔が可愛い。


「今度デートしてくれるなら、わたしの写させてあげてもいいですよ♡」

「アイザックならタダで写させてくれるのに」

「タダより高いものはないって言いますよね」


 怖いことを言うな。

 あと急に真面目くさった顔をするな。より怖さが増すだろうが。


 馬車が停まった。男爵家に着いたようだ。

 馬車を降りるリリアに手を貸してやりながら、やれやれとため息をついた。


「今だってデートみたいなものだろ」

「全然違います。エリ様が『デートだ』って思ってくれるのが重要なんです」


 リリアが頬を膨らませて、唇を尖らせる。

 女心にはずいぶん明るくなったと思っていたが……リリアが何を求めているのか、よく分からなかった。


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